帰したくない
1 奴良組総員にとって悪夢だった、酒に酔ったリクオが大暴れした次の日。 破壊された部屋を昼間に何とか修復し、夕方になって宴会を再開したが、 何事もなかったかのように、とはいかなかった。 夜の姿に変化した途端に女たちは遠ざかり、男たち、特に首無や青田坊や黒田坊、 そして古参の幹部たちの態度は、どこかよそよそしかった。 自分がしたことを朝になって聞かされたが、夜になってもその時の記憶は全く思いだせなかった。 このオレが女を口説きまくった?幹部たちに暴言を吐いた?信じられねーな。 酌に来ても一口しか注がれないので、手酌で酒を注ぎたしながら、リクオは狐につままれた気分で飲んでいた。 おとなしく盃を傾ける三代目をよそに、皆は酒がまわりはじめ、昨夜の出来事など忘れたかのように盛り上がり始めた。 そういや鴆は… 半妖の里には時々治療に来てくれていたが、奴良組に戻ってきてからろくに話もできなかった。 入れ替わり立ち替わり酌をしに来る者たちが今夜はいないのをいいことに、リクオは鴆の姿を探した。 鴆はいつも総会の時に座っている、リクオからそう遠くない場所で、他の幹部たちと盃を傾けている。 リクオも輪に混ざろうと、腰を上げかけた時、鴆がこちらを向いた。 ところが目があった瞬間、明るい緑の目は、ふいとそらされてしまった。
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