帰したくない
6 「あっ…ぁあんっ…」 心無く内部を蹂躙していた冷たい器具は抜き去られ、代わりに待ち望んだ熱い塊が入ってきた。 ずっとこれが欲しかった。気持ちが伴わずに身体だけ高められてもつらいだけだ。 鴆の熱を身体の奥に感じながら、リクオはようやくいましめを解かれた両腕で鴆の背中にしがみついた。 「あっ…あっ…」 薬液の滑りを借りて狭い内壁を擦りたてられる度に、身体に、心に熱が灯る。 「リクオ…」 すこし掠れた声と共に、唇を塞がれる。 奥を突かれながら口腔をも蹂躙されて、息が苦しい。 でも鴆でいっぱいの心はとうに何も考えられなくなっていて、これで死ぬならそれでもいいと思った。 けれど鴆はひとしきり口腔を愛撫すると唇を離し、リクオをきつく抱きしめると、激しく腰を動かし始めた。 「あんっ、あっ、あっ、あんっ…!」 なすすべもなく揺さぶられ、喘がされる。 すぐ耳元で、鴆の荒い息遣いが聞こえた。 激しく擦れあっている部分が熱く蕩けている。 繋がっている部分からひとつに溶け合っていく。 このままひとつになってしまえたら、どんなに幸せだろう。 中にいる鴆がひときわ大きく脈打ち、限界が近いことを知らせる。 興奮しきった昂ぶりに強く抉られ、リクオの身体がビクンと震えた。 「ああっ…ぁっ…」 「くっ…リクオッ…」 喉の奥から絞り出されたような鴆の呻き声と共に、奥に熱い飛沫が広がる。 この男に征服される、そんな自虐めいた快感を覚えながら、リクオもまた己の欲望を吐きだした。
何度も体勢を入れ替え、文字通り何もでなくなるまで睦みあったその後。 風呂で清めた身体を満足そうに抱き寄せようとする鴆に、リクオがかすれた声で言った。 「ところで鴆…『酔って手近な女を口説いちまうことなんざ、誰にでもあることだ』っつってたよなぁ…」 ぎくりと動きを止めた腕をすり抜け、リクオはむくりと起きあがった。 枕元にあった祢々切丸を掴むとすらりと鞘を抜き、ギラリと光る刃を、顔をひきつらせた鴆の喉元に突きつける。 「ってことは、お前も酔って女を口説いたことあるんだな? その時のこと、洗いざらい吐いてもらおうか」 「ひっ…」 先刻までの甘い空気はどこへやら。鴆は今初めて、夜明けが来ることを切実に願った。
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