ここから願うよ




総会の前にリクオの部屋を訪れていた鴆が、

今夜、宴会中にこっそり抜け出さねえか、と言ってきた。

まじめで義理堅い鴆から、こんな提案をしてくるのは珍しい。

とはいっても、いつも途中でいなくなるリクオの後を追って、鴆も宴会を抜け出したりはしているのだが。

見た目よりずっと力強い腕に抱かれて、低音で耳元をくすぐるように囁かれれば、リクオが拒む理由はなかった。

今日は七夕。お祭り好きな本家では、大きな笹が庭から大広間の軒先に立てかけられ、

皆の願い事が書かれた短冊が、笹の葉と共にさらさらと音を立てている。

笹竹は昨日、薬師一派の組員たちが運んできたものらしい。

総会が開かれ、その後は七夕宴会となった。

乾杯の口上と、幹部たちから酌を受けた後で、リクオはいつものように宴会を抜け出した。

とりあえず、自分の部屋に向かって歩いていると、鴆が追ってきた。

「で、どうする?部屋で飲み直すか?」

そんなことだろうと思って持ち出してきた一升瓶を、鴆は取り上げた。

「今日は七夕だろ。天の川を見に行こうぜ」

リクオより年上のはずの男は、そう言って子供みたいに笑った。




Bot用に用意した七夕ネタの晴れバージョン;
七夕は6日夜に祝って7日朝に川に流すものらしいですが、
7日が総会なら7日も祝っているかなーと勝手に解釈;
思い切り繁忙期でしかも別の話も終わっていませんが、
どうぞ気長にお待ちくださいませ;;
そして拍手とコメありがとうございました!!