ここから願うよ
1 総会の前にリクオの部屋を訪れていた鴆が、 今夜、宴会中にこっそり抜け出さねえか、と言ってきた。 まじめで義理堅い鴆から、こんな提案をしてくるのは珍しい。 とはいっても、いつも途中でいなくなるリクオの後を追って、鴆も宴会を抜け出したりはしているのだが。 見た目よりずっと力強い腕に抱かれて、低音で耳元をくすぐるように囁かれれば、リクオが拒む理由はなかった。 今日は七夕。お祭り好きな本家では、大きな笹が庭から大広間の軒先に立てかけられ、 皆の願い事が書かれた短冊が、笹の葉と共にさらさらと音を立てている。 笹竹は昨日、薬師一派の組員たちが運んできたものらしい。 総会が開かれ、その後は七夕宴会となった。 乾杯の口上と、幹部たちから酌を受けた後で、リクオはいつものように宴会を抜け出した。 とりあえず、自分の部屋に向かって歩いていると、鴆が追ってきた。 「で、どうする?部屋で飲み直すか?」 そんなことだろうと思って持ち出してきた一升瓶を、鴆は取り上げた。 「今日は七夕だろ。天の川を見に行こうぜ」 リクオより年上のはずの男は、そう言って子供みたいに笑った。
Bot用に用意した七夕ネタの晴れバージョン;
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