ここから願うよ

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宴会を抜け出したリクオと鴆は、蛇ニョロに乗って天の川を見に出かけた。

浮世絵町のような都会では地上の光が明るすぎて天の川は見えないと言われているが、

妖怪の血を継いでいるリクオは、よく晴れた新月の夜であれば、星の大河を見ることができる。

しかし、今夜は満月を過ぎたばかり。

晴れ渡ってはいるが、これほど月が明るいと、さすがに妖の目でも星は見えづらい。

生粋の妖怪である鴆の目でもそれは同じらしく、見えねえなあ、と眩しそうに目を眇めている。

「おめーにしちゃあ気の利いた誘いだったが、あいにくだったな」

そう言ってやると、オレにしちゃあとはどういう意味だ、と後ろから羽交い絞めにされた。

「だいたいあの辺だろ。もうちょい空が暗けりゃなあ。」

リクオをぎゅうぎゅうと抱きしめたまま、片手で空の一点を指さす。

痛いほどに締め付けてくる腕を緩めさせようと、見た目よりも力強い腕に手をかけると、

大きな手がリクオの手を包み、背後から唇を奪われた。

「んっ…」

熱い舌が侵入してきて、リクオをとろけさせる。

「天の川が見えなかったのは残念だけどよ…あんたとこうして二人きりになれただけで嬉しいぜ」

それじゃあいつもと変わらねえだろ、という憎まれ口は、再び降ってきた口づけの熱に溶かされてしまった。