もっと見たいよ




鴆に教えられた大人のキスは、想像していたものとまったく違った。

「んっ…」

暖かくてざらりとした舌が唇を割って侵入し、戸惑う舌を絡め取る。

気が遠くなるほどしごかれて吸われて、それから歯茎を、口蓋や頬の内側を、

その形を確かめるように舌が触れる。

熱い舌で何度もねっとりとなぞられる度に、電流のような快感が走って、

ここが、誰がのぞいているかわからない本家であることも、今が昼間であることも、何も考えられなくなってしまう。

こんなキスをされたら、昼間の華奢な身体ではもう立っていられない。

力が抜けてくずおれそうになる身体を、力強い腕が支えた。

「は…ぁっ…」

抱き寄せられた胸は広くて暖かい。

しがみ付いた背中は、夜の身体でいる時よりも、ずっと頼もしく感じる。

リクオは飲みきれなかった唾液が口の端を伝うのもそのままに、ぼんやりと鴆を見上げた。

そんなリクオを見つめて、鴆は苦笑する。

「んな顔すんなよ…今夜、うちに来るだろ?」

これ以上したら、抱きたくなっちまう。

鴆はそう言いながら、もう一度、名残惜しげに口づけた。




彼をのせた朧車が去っていくのを玄関先で見送る。

毎日のように昼間会いに来てくれて、毎晩のように薬鴆堂を訪ねて、夜明け前まで一緒にいるけれど。

帰っていく鴆を見送るのは、少し苦手だった。




日付が変わってしまいましたがHappy Halloween!
気力を振り絞って無理やり更新…
拍手とコメありがとうございましたー!
お返事まだですみませんー(>_<);;


 



裏越前屋