もう我慢できない・・・

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「なあリクオ…悪かったよ…っていうか、あんただってひでーだろ…」

身体を清めるなり、布団を頭からかぶって背を向けてしまったリクオに、

鴆は声をかけるが、その口調にさっきまでの勢いはない。

閨で恋人に他の女の名を呼ばれたら、怒るのは当然だ。

だが先刻のお仕置きで鴆の気はすんでしまって、そうなると蓑虫のように布団にくるまって

無言の抗議をするリクオに対して、まるで強気に出られなかった。

「…」

布団の中で、リクオが何かを言った。

言葉はくぐもってよく聞こえない。

「何だって?」

「…遊びだって言った」

「はぁ?」

オレが?いつ?

「新しい遊びだって言っただろ」

鴆は首をひねったが、そう言われて思い当った。

――新しい遊びを教えてやるよ。

最中にそんなことを言ったような気もする。

リクオは布団からほんの少し顔を出して、こちらを睨んでいた。

それまで布団にくるまっていたせいか、その顔は上気して――目には涙が溜まっていた。

ズキッ

問答無用の罪悪感が鴆を襲った。

「こんなこと、お前にとっちゃ遊びなんだろが、オレは…」

「んなの言葉のあやってやつで…あんた、ずりぃぞ!」

リクオに対する真剣な気持ちは、これまでさんざん伝えている。

それにもかかわらず揚げ足をとるようなリクオの言葉に鴆は抗議しようとしたが、

涙の溜まった目でじっとりと睨まれると、どうにも分が悪かった。

「う…悪かった…あんたとの行為は遊びじゃねーよ。だから機嫌直してくれよ…な?」

布団の上から愛しい身体を抱きしめ、まなじりに溜まった涙を吸いながら、

やっぱりこのお人には勝てねぇな…と鴆は思った。




おわり


まあお互い様ってことで…
リクオ様は鴆さんと恋仲でも寝ぼけて「つらら〜」とかいいそうとおもっていたので書いた話でした;
逆に、起こしに来たつららに「鴆」って抱きついて肺まで凍らされそうな気もします。
読んでくださってありがとうございました!



裏越前屋