夢に見るは貴方




「誕生祝い、何が欲しい?」

それはお互いの熱を確かめ合った後のこと。

身体を清め、清潔な襦袢に包んだ身体を抱きしめ、白い額に口づけながらの、睦言のような問いだったのだが。

「何もいらねえ」

恋人の返答は、そっけなかった。

事後の甘さなどかけらもない、尖った声に、鴆はやや怯んだ。

先刻まで甘い声で己の名を呼んでくれていた恋人は、今は険のある目つきで鴆を睨んでいる。

「物も生き物も一切いらねえ。妙な趣向とか、金輪際なしだからな!」

どうやら、ひと月前の鴆の誕生日のことを根に持っているらしい。

毛を逆立てた猫のように、すっかり身を固くして警戒してしまっている。

「わ、わかった。あんたが嫌がることは何もしねえよ」

これ以上何かしたら、本当に嫌われてしまいそうだ。

しかし、固くなった身体から恐る恐る手を引きかけた時、その袖を白い手がそっと引いた。

「リクオ?」

「その…何もすんなってことじゃなくて」

今日みてえに、普通にしてくれんなら。

金色の目を伏せ、目元を染めてぼそぼそと言う姿は、もう先刻までのかわいい恋人のそれに戻っていて。

今すぐにでもお誘いに乗りたくなって、鴆はリクオを抱きしめ、その唇を塞いだ。





リク誕2012です。
リク誕もカウントダウンで!と詰め寄ってくださったNかのさま、
攻夜で!と提案してくださったJまーさま、ありがとうございます。
ご期待に添えるかわかりませんが、がんばりますー(>_<);;



裏越前屋