夢に見るは貴方
1 「誕生祝い、何が欲しい?」 それはお互いの熱を確かめ合った後のこと。 身体を清め、清潔な襦袢に包んだ身体を抱きしめ、白い額に口づけながらの、睦言のような問いだったのだが。 「何もいらねえ」 恋人の返答は、そっけなかった。 事後の甘さなどかけらもない、尖った声に、鴆はやや怯んだ。 先刻まで甘い声で己の名を呼んでくれていた恋人は、今は険のある目つきで鴆を睨んでいる。 「物も生き物も一切いらねえ。妙な趣向とか、金輪際なしだからな!」 どうやら、ひと月前の鴆の誕生日のことを根に持っているらしい。 毛を逆立てた猫のように、すっかり身を固くして警戒してしまっている。 「わ、わかった。あんたが嫌がることは何もしねえよ」 これ以上何かしたら、本当に嫌われてしまいそうだ。 しかし、固くなった身体から恐る恐る手を引きかけた時、その袖を白い手がそっと引いた。 「リクオ?」 「その…何もすんなってことじゃなくて」 今日みてえに、普通にしてくれんなら。 金色の目を伏せ、目元を染めてぼそぼそと言う姿は、もう先刻までのかわいい恋人のそれに戻っていて。 今すぐにでもお誘いに乗りたくなって、鴆はリクオを抱きしめ、その唇を塞いだ。
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