夢に見るは貴方
7 何度達しても離れがたくて。 リクオも文句を言わなかったから、向かい合わせに繋がったまま、湯に浸かった。 「リクオ…あの香水、気に入ってんのか?」 腰まである濡れた髪をすき、白い肩が冷えないように湯をかけながら、鴆はたずねた。 「香水っつか、コロン?んー、鴆が嫌だってんならもうつけねえよ。 おめーに嫌われたくねえもん」 甘えるように湯船でぎゅっと抱きつかれ、鴆は幸せをかみしめる。 リクオが気に入っているならかまわないと、言ってやれない己の狭量さを、心の中で詫びた。 服も香りも、リクオが選んだものであるなら気にならないが、他の男からの贈り物を身につけられるのはやっぱり嫌だ。 それに。 「もうとっくに日付変わっちまったけどよ。誕生日おめでとう、リクオ」 水気を含んだ唇に己の唇を押し当て、一番に祝えなかった悔しさを押し隠してそういうと、 リクオはくすぐったそうに笑って、ありがとな、と言った。 「来年も祝ってくれんだろ?」 湯で温まった白い手で鴆の頬を挟み、内心の悔しさをなだめるような言葉をかけられて、 心のもやが少しは晴れた気がした。 そう、来年も、再来年も、リクオの一番近くで誕生日を祝うのはこの自分だと。 そう心に決めて、鴆は湯の中で骨ばった腰を抱き、再びリクオの中で熱を持ち始めた己を動かした。
その日の夕方。 腰のだるさと、あまりにはじけすぎた己の言動に、むっつりと不機嫌になりながらも、 リクオは鴆に贈られた羽織と長着を着て、祝い酒を飲んでいた。 襟元から見え隠れする、花びらのようなうっ血の痕には、本人だけが気づかずに。
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