夢に見るは貴方




何度達しても離れがたくて。

リクオも文句を言わなかったから、向かい合わせに繋がったまま、湯に浸かった。

「リクオ…あの香水、気に入ってんのか?」

腰まである濡れた髪をすき、白い肩が冷えないように湯をかけながら、鴆はたずねた。

「香水っつか、コロン?んー、鴆が嫌だってんならもうつけねえよ。

おめーに嫌われたくねえもん」

甘えるように湯船でぎゅっと抱きつかれ、鴆は幸せをかみしめる。

リクオが気に入っているならかまわないと、言ってやれない己の狭量さを、心の中で詫びた。

服も香りも、リクオが選んだものであるなら気にならないが、他の男からの贈り物を身につけられるのはやっぱり嫌だ。

それに。

「もうとっくに日付変わっちまったけどよ。誕生日おめでとう、リクオ」

水気を含んだ唇に己の唇を押し当て、一番に祝えなかった悔しさを押し隠してそういうと、

リクオはくすぐったそうに笑って、ありがとな、と言った。

「来年も祝ってくれんだろ?」

湯で温まった白い手で鴆の頬を挟み、内心の悔しさをなだめるような言葉をかけられて、

心のもやが少しは晴れた気がした。

そう、来年も、再来年も、リクオの一番近くで誕生日を祝うのはこの自分だと。

そう心に決めて、鴆は湯の中で骨ばった腰を抱き、再びリクオの中で熱を持ち始めた己を動かした。




その日の夕方。

腰のだるさと、あまりにはじけすぎた己の言動に、むっつりと不機嫌になりながらも、

リクオは鴆に贈られた羽織と長着を着て、祝い酒を飲んでいた。

襟元から見え隠れする、花びらのようなうっ血の痕には、本人だけが気づかずに。




リクオ様お誕生日おめでとうございまーす!(>▽<)
NEXTの巻頭カラーのあのそろいの羽織と着物は
鴆さんからのお誕生日プレゼントだったらいいなという妄想
(以前も若のマフラーで似たような妄想を…)
ここまで読んでくださってありがとうございました!

 



裏越前屋