「んっ…」

指を入れられる瞬間は、どうしても慣れない。鳥肌が立つような感触に、リクオは鴆の腕をぎゅっと掴んだ。
鴆はリクオの表情をうかがいながら、ゆっくりと、指を浅く抜き差しする。
そんな部分を指で探られるなんて恥ずかしくてたまらないのに、今は鴆の雄を咥えているうちに昂ってしまった熱を何とかしてほしい。
口淫の時から、痛いほどに張り詰めている分身に触れて欲しくて、潤んだ目で鴆を見上げると、鴆は後孔を愛撫しながら、野性的な表情で笑った。

「そんなカオしたって駄目だぜ。今度は後ろだけで達ってもらう」

一体どんな表情をしていたというのか。
わからぬまま、鴆の指は次第に奥へと潜り込み、狭い器官を押し広げるように擦られると、身体は教えられた快楽を次第に思い出しはじめた。
擦られたところから熱が生まれ、じわじわと体中に伝わっていく。もっと欲しいと身体が騒ぎ出す。

「あっ…あっ…」

指の動きに合わせて腰が揺れ、擦られる度に恥ずかしい声が漏れてしまうのを見て、鴆は徐々に指を増やしていく。

「ああん…ッ」

指の腹がある一点に触れた途端、身体全体が跳ねて、リクオは鴆にしがみついた。
弱点を探り当てた指は容赦なく、他の二本の指と共にリクオを責め始めた。
電流のような刺激が背筋を伝って脳を刺激する。
そこに施されている愛撫のこと以外、何も考えられなくなる。
触れられていない分身は、もうはちきれそうになっていた。

「あっ…あっ・・・もう・・・ッ」
「達けよ…」

乱れるリクオの姿に熱い視線を注ぎながら、鴆が促す。
その言葉と指に追い上げられて、リクオは身体を震わせて精を放った。

「指だけでイッちまったな・・・」

絶頂の余韻による震えもおさまらないうちに、鴆は耳朶を噛み、嬉しそうに囁いた。
思考がマヒしていて、怒る気もおこらない。
鴆はそんなリクオから指を引き抜き、硬く引き締まった両脚を抱え上げると、己の雄を秘所にあてがった。

「あっ…あああんっ・・・」

待ち望んでいたものが、ずぶずぶと己の中を割り開いていく感覚に、リクオは喉を震わせた。
先刻己が口にした鴆の雄が、今は自分の中で、どくどくと脈打っている。

「鴆…」
「俺のこと、好きか」

見上げると、鴆が真剣な表情で見つめていた。
何だって今さら、そんなこと。
リクオは両腕を鴆の首にまわして引き寄せると、唇を重ねた。
鴆に教えられた手順で舌を絡め、唾液をすすりながら、中にいる鴆を締めつけた。

「ッ…ずるいな、あんたは」

鴆は悔しそうに呟くと、絶対言わせてやるとばかりに、リクオの中で動き始めた。
ひと突きする度に脈打ち、大きさを増していく肉棒はリクオを暴いて押し開き、擦りたてる。
動きが激しくなるにつれ、結合部分からは濡れたいやらしい音が、肉を打つ乾いた音と共に大きく響いた。

「あっ・・・あんっ・・・」
「言えよ、リクオッ・・・」
「あっ・・・鴆…ぜんっ・・・！」

涙を零し、痩せた背に爪を立てても、リクオは鴆の望む言葉を与えなかった。
業を煮やした鴆は、リクオの最奥に欲望を叩きつけた後も、体勢を入れ替えてなおもリクオを責め続け、甘い拷問は、リクオが失神するまで続けられた。

「好きだぜ、鴆」

気がついてから一番にそう言ってやると、後始末をしていた鴆は驚いたようにリクオを見た。

「これでいいんだろ」

一瞬の呆けた表情の後、本当にうれしそうに破顔すると、鴆は「遅っせぇよ」とぶっきらぼうに言った。
気を失っている間に拭いてくれたのだろう、さらりとした身体を長襦袢に包み、やさしく抱き寄せてきた。
甘い言葉なんて素面ではとても言えないけれど、熱に浮かされて言わされるのはもっと嫌だった。
軽々しく口にはできないくらい、この気持ちは本物だから。

鴆の優しく労わるような口づけを顔じゅうに受けながら、リクオは心地よいぬくもりに身体を委ねて目を閉じた。