月 時鳥



突然、まったく遠慮のない力で股間を掴まれ、南郷は喉まで出かかった悲鳴を、必死の思いで押し殺した。
何するんだと隣を見れば、暗闇の中、スクリーンの光に照らされ浮かび上がった白い顔が、唇を吊り上げてこちらを観察していた。

「ちょっ」
「シッ…」

小声で抗議しようとしたが制止された。
おもわず口をつぐむと、アカギは何事もなかったように前を向いた。
しかし無法な手は南郷の股間を、スラックスの上から刺激している。
最初とはうってかわって穏やかな手つきでそこを揉みほぐされているうちに、
次第に妙な気分になってきて、悪戯する手を止める気もなくなった。
細く長い指で弄ばれたそこはじわりと熱を持ち始め、形を変えつつあった。
煽られる度にどくどくと脈打ち、脈打つ度に固く張りつめていく。
まわりに気づかれないようにひそやかに、南郷はため息をついた。
気持ちいいが、何枚もの布越しに与えられる刺激にはやはり物足りなさを感じる。
自分から導いて、直に触らせてやろうかと考えていたら、ジッパーを下ろす音がして、指が中に侵入してきた。
指は布をかきわけ、奥ですっかり大きくなって窮屈にしていたそれを引っ張り出した。
すでに濡れている先端や、血管の浮き出た裏筋を指の腹で確かめるように撫でまわすと、
今度は遠慮のない手つきで扱きだした。

直接手のひらに包まれて扱かれる快感に、南郷の息は自然と荒くなる。
すこし強めに握られた手の中が、今朝、挿入した時のアカギの中を思い出させた。
違う、こいつの締め付けはこんなものではない。蕩けそうな熱だって――
あの時に比べたらまったく物足りない刺激なのに、分身は勝手に内部の感じを思い出し、
はちきれそうに興奮している。

この程度の悪戯でみっともなく息を乱している自分を、アカギはさぞかし嘲笑っていることだろう。
そうおもっていた南郷は、隣を見て驚いた。

アカギは前を向いていた。スクリーンの光に映し出された横顔は微かに紅潮し、瞳は潤んでいるようにみえた。
微かに開いた薄い唇からは、押し殺したような、切なげな息が漏れていた。
右手で南郷の肉棒を忙しなく扱きながら、左手は自分の股間をスーツの上から、なだめるように撫でていた。
周りに人がいっぱいいる、こんな場所で、アカギが自分に欲情している――
それがわかったとたんに、南郷の身体にさらなる欲望の火がともった。

 

短いですけどとりあえずイベント前の置き土産に

アカギ部屋