アカギの長い夜

 

 

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<イツキの話>

 

「昔々、ある商人に3人の息子がいました。
商人は息子達に金貨3千枚を遺して亡くなりましたので、
3人はこの遺産の分け前で、店を開いて商いをしておりました。

けれど、商売をはじめてからまもなく、ガムテープ屋を営んでいた一番上の兄、慎吾は
持ち合わせ品物を金貨1千枚で売り払い、旅に必要な品々とEG6を買い、
異国へバトルの旅へと出かけていきました。
丸1年というもの、あちらこちらでガムテープデスマッチを仕掛けまくり、帰ってまいりませんでした。

ある日のこと、一番下の息子の拓海が父親から継いだ店、藤原豆腐店の店先で
ぼーっとしておりますと、思いがけなく1人の乞食が目の前にやってきて、施し物を求めました。

 

「あの・・・そこにいられるとお客さんこないんで・・・
昨日の売れ残りならあげますから、どこかに行ってくれませんか?」

と拓海が言いますと、この男は泣きながら答えました。

「おまえってつくづく薄情な奴だよなぁ・・・てめぇのアニキの顔もわからねーのかよぅ」

よくみると、それは兄の慎吾でした。

拓海は驚いて店の中に迎え入れ、一体何があったのかとたずねました。

「バトルに負けて、EG6は崖下へまっ逆さまでよ・・・
命だけは助かってこうして帰ってきたわけだ」

そこで拓海は慎吾に風呂を使わせ、着る物などを買ってやり、家に住まわせました。

 

それから慎吾に店番を任せ、拓海が配達に行くようになりました。
まじめに働いたおかげで財産は金貨2千枚に増え、
拓海はその半分を慎吾に分けてやって、言いました。

「バトルに行くのなんてやめて、まじめに仕事してくださいね」

慎吾は大いに感謝してこの分け前を受け取り、独立して店を開きました。

 

その後、数日の間は何事もなく過ぎました。
ところが、ほどなく2番目の兄、ケンタがバトルの旅を思い立って、手持ちの品を売り払い、S14を買いました。

もちろん拓海はひきとめましたが、ケンタはいっかな聞き入れず、
旅の支度をととのえると、S14でバトルの旅へとでかけて行きました。
そして、まる1年留守にしてから、慎吾と同じような格好で帰ってきました。

「レインバトルで刺さっちまってさ・・・Q's、廃車になっちまった」

しょんぼりと語るケンタに、

「だからバトルなんかやめろっていったじゃないですか・・・」

拓海はそういいつつも、ケンタに食事や飲み物を与え、家に住まわせました。

 

それからケンタに店番を任せ、拓海が配達に行くようになりました。
まじめに働いたおかげで財産は金貨2千枚に増え、
拓海はその半分をケンタに分けてやって、言いました。

「もうバトルに行くのなんてやめて、まじめに仕事してくださいね」

ケンタは大いに感謝してこの分け前を受け取り、独立して店を開きました。

 

こんな調子でしばらく過ごしていましたが、
やがて慎吾とケンタはいっしょにバトルの旅に出ないかと言って、拓海にうるさく迫りだしました。

 

 

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