アカギの長い夜 |
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宿を引き払った拓海が兄達の向かった峠にたどり着くと、 「何度言ってもダメなもんはダメだ。俺たちは地元じゃバトルしねぇ」 腕組みして宣言しているのはなんと、今朝出て行ったあの青年でした。 「あんたは・・・」 思わず呟いた拓海に気づいた彼は驚いたように目を見開き、 「・・・わかった。そこまで言うなら遊んでやってもいいぜ」 遊ぶ、という言葉に気色ばむ兄達をさらに挑発するように啓介は笑います。 「ただしダウンヒル一本だけ。相手はそのハチロクだ」
啓介の要求に、兄達は当然反発しました。 「FDにハチロクで勝負しろだと!」 しかし啓介は一歩もひきません。 「だからこればバトルじゃねぇ。遊びだつったろ。嫌ならお断りだ」 にべもない啓介に、兄達はしぶしぶその条件を飲みました。
「啓介」 そのまま黄色のFDに乗り込もうとする啓介を、呼び止める声がありました。 「わかってるよアニキ。だけどこれはバトルじゃねぇから。それに」 宿に運ぶ間、一度も啓介を苦しめなかった拓海の運転。 (たぶんこいつ、なかなかやる・・・!)
啓介の予感は的中しました。 リーダーの高橋涼介は潔く負けを認め、 荷物を積み込み、明け方近くに出発すると、ふもとに下りる途中、
キキキキキィー!!! 「バカヤロー!死にてぇのかぁ!・・・・ぁ?」 なんと立っていたのは高橋啓介でした。 「藤原拓海に話がある。悪いが席をはずしてくれねーか」 凄まれて、兄達は文句を飲み込み、しぶしぶ先に行きました。 「話ってなんですか」 とたずねました。 考えてみれば、まともに向き合ったのは、宿で啓介が目を覚ましたとき以来です。 啓介はタバコを地面に落として踏みつけると、拓海の目を見て言いました。 「藤原。俺とケッコンしてくれ」
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