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拓海は耳を疑いました。
しかし啓介は至極まじめな顔です。
「俺だって信じらんねーけどよ・・・
人間風情の、しかも男で、しかもこんなぼけぼけした奴をさ」
「・・・あんたケンカ売りに来たのかよ」
拓海の目がおもわず険しくなりましたが、啓介はかまわず続けます。
「けど俺、怪我したってあんなに親身に看病されたのはじめてでさ。
それだけでもインパクトあったのにあのバトルだろ。
言っておくが俺はアニキ以外に負けたことなんかねーんだぜ」
拓海はため息をつきました。
「それが何だっていうんですか。
目の前で死にかけている人がいたら誰だって助けるよ。
それにあれはバトルじゃなくて遊びだって言ってたじゃないですか。
本気じゃない、しかも怪我人のあんたにたまたま勝ったからって、
そんなの凄くも何ともないよ」
そもそもそれが何でケッコンに結びつくのか、拓海にはさっぱりわかりません。
しかし啓介の中ではそれらのことはばっちり繋がっているようでした。
「俺は今まで何かに執着したことなんか何もなかった。
欲しいものは何でも手に入ったし、何でも出来た。
生きることにすら飽き飽きしていた俺を見かねて、アニキは今のゲームに
俺を誘ってくれたけど、相手はみんなクズみたいなやつらばっかりだ。
この世界に欲しがる価値のあるものなんて一つもないって、そうおもってた。
そんな時に、お前に会ったんだ。」
いつしか話に耳を傾けている拓海を、啓介はそっと抱きこみました。
「お前に会って、世界が変わった。
こんなやつもいるんだって、2回も思った。
なあ拓海。パートナーとして、ライバルとして、俺にはお前が必要なんだ。
お前の側にいさせてくれねーか?」
耳元で熱心に口説かれて、拓海はつい承諾のキスを受け入れてしまいました。
そうして拓海は啓介と一緒になりました。
はずみでくっついた夫婦でしたが、初日から夜の営みはしっかりいたしておりました。
やがて兄達に追いついた後も、2人は一緒に旅を続け、一緒のベッドで眠り、
一緒に買い出しに行きました。
そのうちに、2人の気持ちはすっかりお互いに惹きつけられてしまい、
盛り上がればいつでもどこでもえっちをしました。
拓海は兄達よりも、啓介に深い愛情をよせるようになりました。
しかも啓介とのバトルの噂が広まって、行く先々で、
バトルの相手に拓海や啓介を指名してくるようになりました。
そうするうちに、慎吾やケンタは拓海に疎々しくなり、
拓海の幸せや走りの才能に妬みを感じ出しました。
こうして兄達は、拓海を欲深い目で狙うようになったのです。
「あいつ、犯っちまおうぜ。ちっとばかし鳴かせてやれば、俺たちのいいなりよ」
「そうすれば啓介さんはオレのものに・・・!」
そうして慎吾とケンタは拓海を犯す相談をしました。
嫉妬と欲望に目がくらみ、こんな所業も2人の目には当然のことのように映ったのです。
そこで彼らは次の宿に落ち着いたとき、拓海が夜中にトイレに行くために部屋を出た時に
拓海を自分達の部屋にひきずりこみ、夜着を剥いで2人がかりで拓海を犯そうとしました。
しかし部屋の外で不穏な物音を聞いた啓介はすぐさま目を覚まし、
拓海が隣にいないとわかるとたちまち魔神に変身しました。
啓介はドアを蹴破って拓海を救い出すと、お姫様だっこして夜空へと舞い上がりました。
「・・・啓介さん、その格好」
「あ?言ってなかったか?俺は実は魔神なんだ」
「そうじゃなくて、何で裸なんですか・・・」
「るせー。んな暇なかったんだから仕方ねーだろ。そういうお前だって」
2人してこんな姿で空を飛んでいて捕まらないだろうか・・・という拓海の心配をよそに、
啓介は人里離れた別荘に拓海を降ろすと自分はまたもやどこかへ飛んで行き、しばらくの間姿を見せませんでした。
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