アカギの長い夜

 

 

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朝になって啓介はもどってくると、こう言いました。

「これで借りは返したぜ。お前の危機を助けたもんな。
だがあいつらには腹が立ってならねぇ。
初めて会ったときから気に食わなかったんだ。きっと生かしちゃおかねぇよ」

拓海はこれを聞いてぎょっとしました。

「助けてくれたことにはお礼を言います。
でもあの人たちを殺すことだけはやめてください」

それから拓海は自分達兄弟が生まれてから今日までの身の上話をして聞かせました。
ところがそれを聞くと、啓介はますます憤慨して言いました。

「おまえ、そこまでされてなんで黙ってるんだよ。
今すぐあいつらのところに行って始末してやる」

拓海はあわてて、

「後生だから、それだけはやめてください。
そりゃ腹立つこともあったけど、あんなんでも俺の兄弟だし。
それに、あの人たちについてきたから、あんたに会えた。
俺は啓介さんと一緒になれて今幸せで、だからあんたに人殺しなんかしてほしくない」

拓海の真摯な言葉に啓介は拓海を抱き上げて空へ舞い上がり、しまいには拓海の家の前に降りました。

 

長い間留守にしていた戸をがらりとあけて店の中に入ると、
そこにはなぜか二匹のブルドッグが繋いでありました。
犬達は拓海の姿を認めると、起き上がって、くんくん鼻を鳴らし、甘えかかってきました。

わけもわからないでいるうちに啓介は

「こいつらはお前のアニキ達だよ」

と言いました。

「ええ!?一体誰がこんな姿に」
「アニキに言ったら、こんなふうにしてくれたんだ。
あのままじゃこの先心配だろ?10年たつまで、こいつらはこの姿のままだからさ」

拓海は困惑して足元にじゃれついているブルドッグ達をながめました。

「どうした?うれしくないのか」
「啓介さん。うち、豆腐屋なんですよ」

 

それでも拓海はがんばって働き、犬達も元の姿に戻るまでそれなりに大事にして、
啓介と末永く幸せに暮らしました。

 

・・・こ、これでどうだ!」

イツキは話し終えると、魔神の反応をじっと待ちました。

 

 

魔神は一言、

「けっ」

と吐き捨てました。

「ぜんぜんエッチがねーじゃんかよ。
そんなんでこの俺様が満足すると思ってんのか?ああ?」
「お、おまけ*もつけますからぁ!」
「ふん、ぜんぜん物足りねぇな。やっぱりこいつは」
「待て待て!次はこいつが話す!」

そういって池谷が背中を押し出したのは、3人の中ではかろうじて一番経験のある健二でした。

「お、俺ェ!?」
「拓海のためだ!頼んだぞ、健二!」

「って言われてもなあ・・・」

健二は頭をひねりながらも、それでも拓海を救うべく、語り始めました。

 

 

 

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