アカギの長い夜

 

 

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夢の中の青年は拓海と名乗りました。
彼は啓介が拾ったあの柴犬で、悪い女の魔法にかけられて、
昼は犬の姿に、夜は人間の姿に戻れるが、えっちをしたくてたまらない身体に
されてしまったのだと、啓介に突かれて泣きながら語りました。

「それで、どうやったら元に戻るんだ?」
「わかりませ・・・あんっ、あんっ、もっとぉ・・・!」

快楽に涙をぽろぽろ流しながら縋り付いて来る拓海がかわいくて、啓介はますます激しく腰を動かしました。

 

そうして啓介は毎晩拓海とえっちをしていましたが、
昼間は柴犬に戻った拓海のきれいな毛並みを撫でながら、ぽつぽつと自分の話をしました。
優秀でかっこいい兄がいること。
子供の頃は仲が良かったのに、最近になって完璧な兄と比べられるのが嫌になったこと。
兄のことは嫌いじゃないけれど、一緒にいるのがつらくて家を飛び出したこと。
拓海は啓介の膝に乗って、啓介の話に耳を傾けました。

そうして夜も昼も一緒に暮らしているうちに、拓海を心底からいとおしく思うようになりました。
夜だけでなく、昼も手を繋いでデートしたり、ごはんをつくってもらったり、えっちしたりしたいと思うようになりました。
ひとつだけ、拓海を元に戻すことのできる心当たりはあったのですが、啓介はどうしてもそれをする気にはなりませんでした。

 

ところがある日、拓海は原因不明の病にかかってしまいました。
拓海は食事を取らなくなり、床に座り込んだきり歩かなくなりました。
啓介が問いかけても、拓海は悲しそうに見上げるだけです。
何より深刻なことには、拓海は夜も人間の姿に戻らなくなりました。
拓海の具合は日に日に悪くなっていくようです。
そこで啓介はとうとう決心して、拓海を抱えて長屋を出ました。

啓介が向かったのは、一件のりっぱな邸宅でした。
その家から出てきたのはなんと、いつか啓介の家の前に来ていたあの青年でした。

「アニキ。こいつを、拓海を助けてくれよ」

頼む、と啓介は言いました。

 

啓介の兄の涼介はお医者さんでした。
動物は専門外なんだがな、といいつつ注射を打つと、拓海はすぐに元気になりました。
啓介がいままでのいきさつを話してから

「アニキ。こいつを人間の姿に戻せないか?」

とたずねると、涼介は

「無理だな。魔法をかけた人間でないととけない」

と答えました。

 

そこで、啓介は拓海を連れてなつきの家に行きました。

「拓海に変な魔法をかけたのはお前だな。はやく元の姿に戻せゴルァ!」

と凄むと、なつきは

「ふーんだ、恐くないもんね。あんたも犬になっちゃえ!」

と唱えました。すると、啓介もたちまち柴犬になってしまいました。

 

「・・・おまえまで犬になってどうする」

足元でわんわん吠える二匹の犬を、涼介は呆れた表情でみつめました。

しかしそうしていても弟達が元の姿に戻るわけではありません。

「仕方がないな」

涼介は2匹の芝犬を連れてなつきの家に行きました。

 

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