アカギの長い夜 |
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灼熱の太陽が砂を焼く、アカギの宮中。 「はあ・・・」 緑の美しい中庭をぐるりと囲む広い回廊を、拓海はよろよろと歩いていました。 空が完全にしらむまでえっちした後は昼まで啓介と眠り。 なにもしていないのに、今こんなふうにひとりでいられる時間はほとんどありません。 「ねむ・・・」 強い日差しをさえぎる木陰の下、拓海は背を太い幹に持たせかけてうとうとしはじめました。 「またなんか話をするかなあ・・・」 話をしている間は啓介もおとなしいので、体の負担が少ないことを拓海は悟りました。 話を聞いているときの啓介の期待に満ちた表情を思い出すと、自然と拓海の気持ちは和らぎました。 「何話そう・・・」 その夜に訪れる嵐のことなど知る由もなく、拓海は眠りに落ちました。
その日の夕方はいつもと様子が違いました。 「今日の晩餐は、陛下と殿下とご一緒に召し上がることになっております」 女官長の重々しい口調に、拓海はつい、はあ、と気の抜けた返事をして、彼女に怒られてしまいました。 すでに3人分の仕度が整えられた食事の間に通され、用意された席にちょこんと座っていると、 「藤原拓海・・・だったな。本当はもっと早くに会いたかったんだが、啓介がなかなか会わせてくれなくてね」 きれいな顔で微笑まれて、拓海はたちまちぼーっと見とれてしまいました。 (どうしよう・・・すげーかっこいい、この人・・・!) アカギの国王、涼介陛下は三国一の美男子だとか、おかげで即位前からお后候補が後を絶たないとか、 「啓介はわがままだから、いろいろ大変だろう」 実は涼介に会ったら山ほど言いたいことがあったのです。 涼介は拓海に啓介の子供の頃の話をし、拓海は涼介に乞われるままに、 拓海の目はすっかり涼介に釘付けだったので、目の前の啓介の形相には長いこと気づきませんでした。
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