アカギの長い夜 |
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(国王陛下ってこんなかっこいいひとだったんだ・・・) ぼーっと見とれていた拓海は、不意にものすごい力で腕を掴まれ、引っ張りあげられました。 「ちょっ・・・どこいくんですか!」 啓介は痛いほど掴んだ手を緩めないまま、どんどん拓海の知らない廊下を進んでいきます。 「いたっ・・・」 ベッドにおしつけられたとたん、髪につけられた飾りが頭にぶつかりました。 「啓介さんっ・・・オレ風呂はいりたいっ」 首筋や鎖骨のあたりの柔らかい皮膚に痛いほど吸い付いては跡を残し、 「・・・啓介。そういうことは自分の部屋でやれ」 頭上から降ってきた凛とした声に、拓海は凍りつきました。 おそるおそる声のしたほうに目を向けると、つい先刻まで見とれていた美貌が、 「ちょっ・・・やめてください!」 はかない抵抗をする拓海を、啓介は物騒な光を帯びた目で見下ろしていました。 (だめだっ、このままじゃやられてしまう!) 人前で、しかも王様の前でえっちをするなんてとんでもありません。 「は、はなし・・・」 苦し紛れに口をついた言葉で、拓海はひらめきました。 「啓介さん、話!今夜はとっておきの話をしてあげようとおもってたんです!」 すると啓介はぴたりと動きを止めました。 「啓介さんの大好きな、眠れない時間が早く過ぎちまうような、楽しくて、おもしろい、 拓海は必死でした。 「その話聞かせろよ」 といつもの表情に戻って言いました。 拓海はほっとして、じゃあ部屋に戻りましょう、と啓介を促したところ。 「おもしろそうだな。その話、俺にも聞かせてくれないかな」 涼やかな声に、拓海は再び固まりました。 「いえっ、陛下にお聞かせするような話ではっ・・・」 拓海は焦りました。 「おい。アニキに聞かせるほどでもない話を俺にする気かよ」 低い啓介の声にそうじゃないだろ、アンタ何考えてるんだと思わず逆ギレしそうになりましたが、 「啓介が小さい頃には俺がよく話をしてやったんだ。 涼介のやさしい笑顔につられて、拓海は後先を考えずについ 「はい・・・」 と返事をしてしまいました。
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