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豆腐屋の息子と王弟の話
昔々、大昔のこと、涼介と呼ばれる王様が、アカギという国をおさめていました。
容姿端麗な上にえらくやり手の王様で、あらゆる国と同盟を結んでいました。
しかし王様はあるとき原因不明の病にかかり、水薬を飲み、粉薬を口にし、
膏薬を使ったりしたけれど、なんのききめもありませんでした。
王様には侍医も大勢いましたが、だれひとりその病をなおしきるものはいませんでした。
ところが、この都へ、ひとりの豆腐屋の息子が配達にやってきました。
まだ年若いその青年は、この国の王様が病気であることを耳にすると、王宮へとやってきました。
豆腐屋の息子は拓海と名乗り、王様と対面すると、その美貌にぽーっと見蕩れながらも、
こう言いました。
「あの、俺は・・・王様が病気だって聞いてここに来ました。
俺は医者じゃないですけど、アキナにいる親父が近所の人たちの怪我や病気をよく診ていて、
王様と同じような状態の人を治していたのをそばでみていました。
だから、たぶん俺にもその病気を治せるとおもいます」
大臣たちは若造が何を言い出すのだ、ならば父親を連れて来いなどといきりたちましたが、
涼介がそれを制しました。
「藤原拓海、といったな?今まで水薬を飲み、粉薬を口にし、膏薬を使ったりしたけれど、
なんのききめもなかった。
世界中の名医をもってしても治すどころか、原因すらわからなかったこの病を、
おまえなら治せるというのか?」
拓海はこくりとうなずきました。
「原因はわかりませんけど・・・王様の病気が俺の知っているものと同じなら、
水薬も粉薬も膏薬も使わずに治せます」
拓海はすぐ町中に一軒の家を借り受けると、薬や香料の根などをとりよせて、
仕事にとりかかりました。
父親がそうしていたように薬や薬草を調合し、またがらんどうの打球棒をこしらえて、
調合した薬をたっぷりとしみこませ、また球もひとつつくりました。
そしてあくる日、用意ができると、棒と球だけを持って王様のところへ行き、
これを使って錬兵場で打球戯の遊びをしてください、と申し出ました。
「この棒を持って、馬上から力いっぱい、汗が出るくらい球を打ってください。
遊びが終わって、薬が効いたような気持ちがしましたら、お風呂に入ってお休みください。
それで病気は治ると思います」
涼介はそのとおりにして一晩休むと、病気はすっかり治っていました。
夜が明けると拓海は王宮に出向いて、涼介に拝謁を願いました。
涼介は拓海の肩を抱き寄せ、自分のかたわらに座らせると、大勢の侍従や大臣たちの前で、
「おまえの技術がほしい」
といいました。
そしてたくさんのお金や衣服や宝石を彼に与え、毎日拓海をそばから離しませんでした。
しかし、この2人のラブラブ(?)ぶりに、めらめらと嫉妬の炎を燃やす者がおりました。
涼介の弟、啓介です。
「ちくしょうアニキのやつ、拓海を独り占めしやがって。このままじゃひきさがらないぜ」
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