アカギの長い夜

 

 

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伝説の王と従者の話

むかしむかし、まつりごとよりもむしろ遊びが大好きな、
それでも家臣や国民にたいへん人気がある王様がいました。
啓介という名のその王様は、とりわけ狩りが大好きでした。
啓介には拓海という名のお気に入りの従者がいて、昼も夜も彼をそばに置きました。
啓介は拓海をもちろん狩りにも連れて行き、啓介がのどが渇いたと思う前に、
いつでも拓海が冷たい水の入った杯を差し出すのでした。

ある日、啓介はいつものように拓海や他の者たちをつれて狩りにでかけました。
ところがカモシカを夢中で追いかけているうちに供の者たちとはぐれ、拓海と二人、森の中ではぐれてしまいました。

森の中は泉はおろか、水は一滴もみあたりませんでした。
啓介も喉は渇くし、馬も水に飢えていました。あちこち探し回っていると、
大枝から水が滴り落ちている一本の木をみつけました。
それはまるでとろけたバターのような水でした。

そこで、毒よけの皮の長手袋をはめていた啓介は、拓海が持っていた杯を取ると、
これに水を満たして、拓海に差し出しました。
するとどうでしょう。拓海は険しい顔で杯を叩き落してしまいました。

「あっ何すんだよおまえ!」

啓介はむっとしながらも、拓海も喉が渇いているとおもったから、
もう一度杯に滴り落ちる水をくんでやりました。
しかし、拓海はまたも怖い顔をして、その水をひっくり返しました。
啓介は完全に腹を立てながらも、3度目に杯を満たすと、拓海はこれもひっくり返したのでした。

「てっめー・・・」

啓介はカッとなって拓海を押し倒しました。

「これまでかわいがってやったのに。俺が汲んでやった水を飲まないばかりか、
俺にも、俺の馬にも水を飲ませないつもりかよ。お仕置きしてやる」

そして拓海の衣服をすべて剥ぎ取ると、その固い蕾をさんざん犯しました。
拓海は泣きながら、

「啓介さんのばか!その木にぶらさがっているものをよくみろよ!」

と言うと、ぼろぼろになった衣服をかきあつめ、森の中へと走り去りました。

啓介が目を上げて眺めると、すぐ上の枝に大きな蛇が巻きついていました。
水だとおもったのは大蛇の毒液だったのです。

啓介は拓海を犯したことを後悔し、行方を捜しましたが、拓海は二度と啓介の前に姿を現しませんでした。

 

・・・とまあこんな話だ。俺がおまえの言葉を鵜呑みにしたら、オウムを殺した男のように後悔するに決まっている。」

ふっと笑う涼介に、

「なんだよ、その話ってのは」

と啓介がたずねたので、涼介はまたもや語りだしました。

 

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