アカギの長い夜

 

 

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啓介はそれから三日三晩、寝室に篭って拓海とえっちをしました。
風呂は寝室の隣のバスルームを使い、食事は寝室に持ってこさせ、
休憩中にシーツを替えさせて、準備が整うとまたえっちを始める始末です。

最初は部屋から出てこない啓介にどうしたのかと城の者たちは心配しましたが、
寝室から昼も夜も聞こえてくるアンアン悩ましい声を聞けば、
何をしているのかは明らかです。城の者たちは心配するのもばかばかしくなり、
史浩は毎日のノルマから開放されてほっと胸をなでおろしていました。

拓海をつれてきた翌日の夕方、いちおうその日14になったばかりの娘を
つれてきたのですが、拓海で満足しているならそれに越したことはありません。

(このまま持ちこたえてくれよ、藤原・・・)

自分の胃のためにも・・・。

史浩が願っていたちょうどその頃、拓海は人生最大のピンチに陥っていました。

 

 

「絶対嫌ですっ!この変態!」

もはや日付や時間の感覚すらなくなった寝室のベッドの上で、
拓海はシーツをしっかり身体に巻きつけ、啓介の命令を全身で拒否しました。
身体中を磨かれてこの寝室に連れてこられた時、もしかしてそういうことをされるかも、
と考えなかったわけではありません。
それでも逃げ出さなかったのは、やはり王宮の馬と飼葉無期限の魅力ゆえでした。

( どうせ一晩で飽きるのなら犬に噛まれると思って・・・)

と思ったことも確かです。
しかしこれでは話が違いすぎます。

「何今更バージンみたいなこと言ってんだよ。別にひとりエッチくらいフツーだろ」

望むものは何でも与えられてきた啓介は、思わぬ拒絶に憮然としました。
啓介にとっては軽い羞恥プレイのつもりでも拓海にとってはとんでもないことでした。
ああいうことはひとりでこっそりやるものです。
それだって自分の浅ましさが恥ずかしくて顔から火が出そうになるというのに。

どんなに凄んでも首を横に振り続ける拓海に、啓介は一つの提案をしました。

「仕方ねーな。今夜はひとりエッチは勘弁してやるよ。
その代わりに、なんかおもしろい話しろよ」

「はぁ・・・?」

思いがけない提案に、拓海は目を丸くしました。
ですが、啓介は大真面目です。

「眠れない時間が早く過ぎちまうような、楽しくて、おもしろい、
これまで聞いたことのない話を聞かせろよ。じゃなきゃひとりエッチだかんな」

「そんな!」

自慢じゃありませんが拓海は口下手でした。
おもしろい話などできるはずがありません。
啓介はそれをわかっていてもちかけているのに違いないのです。

「まさかどっちも嫌とは言わねーよな?さあ男らしく腹くくってもらおうか」

ニヤニヤ笑う啓介に、拓海本来の負けん気が頭をもたげました。

(よーし・・・やってやる!)

腹をくくった拓海はおもむろに口を開きました。

「む、むかしむかし・・・」
「なんだそっちかよ」

啓介はちっ、と舌打ちしましたが、拓海が殺気を帯びた目で睨むと黙りこみました。
ですが、さすが一国の王子だけあって、注文をつけることは忘れません。

「おい、俺とおまえがでてくる話にしろよ」
「何ですかそれ!」

今にも逆切れしそうな拓海に、啓介は胸を張って言いました。

「ガキの頃、アニキがよく寝る前にいろんな話してくれてさ。どの話もオレが主人公だったんだ」

誇らしげに話す啓介に、あんたは今でも十分ガキだよ・・・と拓海は心のうちでつぶやきます。
それにしても一体どういう育て方をしたらこんなわがまま小僧ができあがるのでしょう。
アニキの顔が見たい・・・と拓海は思いました。

「わかりましたよ。それじゃあえっと・・・むかしむかし、アキナという小さな国で
細々と商売をしている、ひとりの商人がおりました・・・」

 

 

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