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―――頭痛の種―――
普通の水族館だが、夜というのもあるのだろうか結構楽しめる。
カニやら毒蛙やら、何か受け付けないものを見るたびに啓介は叫んでいたが、ちゃんと水槽内にいるから大丈夫だろうと言っても、どうにも見るだけでも嫌らしいのだ。
そのくせ、気色悪いと言いながらも見ているのはどういうことだ。
―――子供かよ、お前はっ
珍しいものにはすぐに興味を持ったりもしているところを見ると、本当に子供の行動と変わらない。
奥へ行くごとに小さい水槽が美術館の絵画ギャラリーのように順番に並んでいたのをゆっくり覗きみるが、ほとんどがすでに寝ているようでじっとしたままだ。
はっきり見ようとペンライトで照らしてみても、動く気配すら感じない。
「死んでるみてぇ」
「んなワケねぇだろ。寝てんだよ」
「人が見てんのに、寝るなよ」
ブーブー文句を言う啓介に、呆れかえってしまう。
「むちゃくちゃなこと言うなよ」
「だってよぉ」
膨れっ面で中里を睨みつけてきて、まだ何か言いたそうな表情に悪戯心が起きる。
真正面から、すかさずキス――。
チュっという音が静か過ぎる館内に少し響き、啓介の顔はびっくりして眸を見開いていた。
驚かせ過ぎたかなと肩を竦め、謝ろうと口を開きかけるよりも早く……。
「テメェーーッ!何考えてやがるんだぁああーーーッ!?」
館内に絶叫が轟いた。
驚いたのは、他でもない。周囲のカップル達だ。
何事かというように、離れた位置から一斉にこちらを振り返る。
ムードをぶち壊されて、針のような視線が降り注ぐ。
確かに不意打ちで、しかもこんな場所でキスしたのは悪いと思うが――――。
「啓介……。何も大声で叫ぶことねぇだろうが……」
頭が痛くなりそうだと、額に手を当て呻いてしまった。