水族館
by さかきさま

 

3

 ―――頭痛の種―――

 

 普通の水族館だが、夜というのもあるのだろうか結構楽しめる。
 カニやら毒蛙やら、何か受け付けないものを見るたびに啓介は叫んでいたが、ちゃんと水槽内にいるから大丈夫だろうと言っても、どうにも見るだけでも嫌らしいのだ。
 そのくせ、気色悪いと言いながらも見ているのはどういうことだ。


 ―――子供かよ、お前はっ


 珍しいものにはすぐに興味を持ったりもしているところを見ると、本当に子供の行動と変わらない。
 奥へ行くごとに小さい水槽が美術館の絵画ギャラリーのように順番に並んでいたのをゆっくり覗きみるが、ほとんどがすでに寝ているようでじっとしたままだ。
 はっきり見ようとペンライトで照らしてみても、動く気配すら感じない。

「死んでるみてぇ」
「んなワケねぇだろ。寝てんだよ」
「人が見てんのに、寝るなよ」

 ブーブー文句を言う啓介に、呆れかえってしまう。

「むちゃくちゃなこと言うなよ」
「だってよぉ」

 膨れっ面で中里を睨みつけてきて、まだ何か言いたそうな表情に悪戯心が起きる。
 真正面から、すかさずキス――。
 チュっという音が静か過ぎる館内に少し響き、啓介の顔はびっくりして眸を見開いていた。

 驚かせ過ぎたかなと肩を竦め、謝ろうと口を開きかけるよりも早く……。

「テメェーーッ!何考えてやがるんだぁああーーーッ!?」


 館内に絶叫が轟いた。

 驚いたのは、他でもない。周囲のカップル達だ。
 何事かというように、離れた位置から一斉にこちらを振り返る。
 ムードをぶち壊されて、針のような視線が降り注ぐ。


 確かに不意打ちで、しかもこんな場所でキスしたのは悪いと思うが――――。


「啓介……。何も大声で叫ぶことねぇだろうが……」


 頭が痛くなりそうだと、額に手を当て呻いてしまった。

 

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