秋祭り

2




別れるといっても、自分たちの関係はそもそも「恋人」ではなく、ただ「双子」だった。

物心ついたときから、抱き合ったり、キスしたり、いつしかそれ以上のことをしていた仲だったから、

「普通の兄弟」に戻るといっても、どうしたらいいのかわからなかった。

ただ触れ合わなくなり、目を合わせなくなり、交わす言葉も少なくなった。

そんな自分たちの…というより、おもにエアの態度の変化に、二人のノーム(地霊)は喧嘩でもしたのかと心配したが、

「別に…いつまでも兄貴にひっついているわけにもいかねーだろ。もうトォルしか見ねーって決めたんだ」

そう答えると、トォルは何故か複雑な表情になった。

これからはおまえのことだけ考えるって言ってるんだから、もっと喜べばいいのに。

お宝探しにも参加しなくなった。ジルと顔をあわせたくなかったからだ。

炎属性ゆえに熱を持て余す身体は、夜毎にトォルを愛することで鎮めた。

糖蜜色の髪と瞳を持つ、気が強くて生意気で、やさしいノームの王子は、何度抱いても飽き足らないくらい可愛かった。

彼だけを愛せればいい。

エアはそう願い、かつて溶け合うようにしっくりと身体になじんでいた、ひんやりとした肌の感触を追い払おうと、

体温が高めの、小柄な恋人の身体を抱きしめた。