秋祭り




秋祭りが近くなり、夏以降変化した双子のよそよそしい様子に、周囲ももう何も言わなくなった頃。

いつものようにトォルを抱きしめて寝ていたエアは、夢を見た。

目の前で燃えている、赤いハート型の炎。

「エア」

振り向くと、夏の制服姿のジルが、優雅にお辞儀して手を差し伸べていた。

「お手をどうぞ」

最近では、エアが避けているせいで、触れることはおろか、呼びかけられることもほとんどなかった。

手をとろうか戸惑っていると、「大丈夫、これは夢だから」、とジルは笑った。

そういえば、ここは夏至祭の舞踏会場。

音楽は流れているのに、フェアリーサークルにも、その外にも、エアたちの他には誰もいない。

そうか、夢ならいいか。エアはそう自分に言い訳して、ひんやりとした手を取った。

優しく抱き寄せられて、慣れ親しんだリードで踊り始める。

まわる度に揺れるアクアマリンの髪。

耳元できらめき、シャラシャラと音を立てる、自分とおそろいのピアス。

抱き寄せられて密着する身体。しっかりと握られた手。

そして、自分を見つめる、ミントキャンディ色の瞳。

いつしか音楽はやんで、エアはジルにきつく、抱きしめられていた。

「エア。きみに触れられないのは寂しいよ」

「ジル…」

切なげに囁かれたら、今まで抑え込んできた感情が堰をきってあふれ出した。

エアは泣きながら、ジルの身体にしがみ付いた。

これは夢だから。朝起きたら、きっと全部忘れている。

そう言い聞かせ、激しい口づけに、自分から応えた。