秋祭り
4
「なあ…あの二人、どう思う」 お宝探しの打ち合わせをするからと、トォルはニィルを誰もいなくなった食堂に呼び出した。 ニィルもホットチョコレートのマグを手にしたまま、黙ってしまう。 「今朝さ、エアが寝ながらジルの名前呼んで、泣いてたんだ。 本人は覚えてないみたいなんだけど」 以前にも同じことがあった。 出会った頃、二人はお互いの持つ氷と炎という相反する属性のせいで、近寄ることもできなかった。 あの時もエアは、眠りながらジルの名を呼んで、泣いていた。 「なんかあの頃に戻ったみたいだよね。ジルも時々怖い顔してるし、あまり笑わなくなったし」 ニィルはココアを一口飲み、溜息をついた。 「今は僕だけを見てくれているはずなのに、胸が痛いんだ。すっごく無理しているのがわかるもん」 ぽつぽつとこぼされた言葉に、トォルも、俺も、と言った。 「これなら、前みたいにべたべたしてくれた方がまだましかなって。 夢の中で想って泣かれちまったらさ、怒るに怒れねーじゃん」 ニィルはしばらくの沈黙の後、口を開いた。 「僕、ジルに婚約者がいるって知った時、別れてやるって思ったんだよね」 思ったどころか、教室で皆の前で大ゲンカしていたけどな。 トォルは内心盛大につっこんだが、口には出さなかった。 「そしたらジルは、僕だけに愛を誓うと言ってくれた。でもエアとは別れたでしょ。 僕をすごく大事にしてくれているのはわかるんだ。 僕の代わりはどこにもいないって言ってくれたけど、エアの代わりだっていないんだよね。 悔しいけど、この先も、ジルの心を僕だけでいっぱいにするのは無理なのかなって」 ニィルは寂しそうに微笑んで、ちょっとだけ泣いた。
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