秋祭り




「なあ…あの二人、どう思う」

お宝探しの打ち合わせをするからと、トォルはニィルを誰もいなくなった食堂に呼び出した。

ニィルもホットチョコレートのマグを手にしたまま、黙ってしまう。

「今朝さ、エアが寝ながらジルの名前呼んで、泣いてたんだ。

本人は覚えてないみたいなんだけど」

以前にも同じことがあった。

出会った頃、二人はお互いの持つ氷と炎という相反する属性のせいで、近寄ることもできなかった。

あの時もエアは、眠りながらジルの名を呼んで、泣いていた。

「なんかあの頃に戻ったみたいだよね。ジルも時々怖い顔してるし、あまり笑わなくなったし」

ニィルはココアを一口飲み、溜息をついた。

「今は僕だけを見てくれているはずなのに、胸が痛いんだ。すっごく無理しているのがわかるもん」

ぽつぽつとこぼされた言葉に、トォルも、俺も、と言った。

「これなら、前みたいにべたべたしてくれた方がまだましかなって。

夢の中で想って泣かれちまったらさ、怒るに怒れねーじゃん」

ニィルはしばらくの沈黙の後、口を開いた。

「僕、ジルに婚約者がいるって知った時、別れてやるって思ったんだよね」

思ったどころか、教室で皆の前で大ゲンカしていたけどな。

トォルは内心盛大につっこんだが、口には出さなかった。

「そしたらジルは、僕だけに愛を誓うと言ってくれた。でもエアとは別れたでしょ。

僕をすごく大事にしてくれているのはわかるんだ。

僕の代わりはどこにもいないって言ってくれたけど、エアの代わりだっていないんだよね。

悔しいけど、この先も、ジルの心を僕だけでいっぱいにするのは無理なのかなって」

ニィルは寂しそうに微笑んで、ちょっとだけ泣いた。