秋祭り




その日は、めずらしく4人が寮の食堂に集まった。

最近はエアが食堂に来る時間をずらしたりして、ジルと鉢合わせすることを避けまくっていたが、

この日はトォルに怖い顔で迫られて、食堂に連行された。

そこにはすでにジルとニィルが並んで座っていて、エアはジルから離れるようにしてトォルの隣に座った。

仏頂面で黙々と食べるエアをよそに、三人は秋祭りの話で盛り上がる。

「そうだ、エア。今度こそ俺とダンス踊れよな」

唐突に、トォルがエアに話を振った。

ダンスという言葉にエアは食事の手を止める。

脳裏に浮かんだのは、夏至祭のダンスと、この間の夢。

しばらくの沈黙の後、

「悪い。俺、女役しか踊れねーし」

と言うと、えー、とトォルが不満げな声をあげた。

「僕が教えるよ」

思いがけない言葉に、エアはつい顔を上げて、ジルの顔を見てしまった。

ミント色の瞳が、まっすぐにこちらを見ている。

「夏至祭の時に、約束したからね」

やわらかく微笑まれ、エアは夕暮れ色の瞳を揺らして、ふいと目を逸らした。

「別にダンスなんか踊れなくたって」

ぼそぼそと断ろうとした途端、ノームたちから盛大なブーイングが起こった。

「てめー、俺と踊りたくねーってのか!」

「そうだよ、エアだってシルフ王家の王子様なんだから。リードの仕方くらい教えてもらいなよ」

めずらしくニィルまでもが、ジルに教えてもらえと迫る。

これ以上は断りきれず、エアはしぶしぶその晩、下の広間の鍵を借りて、ジルにダンスを教えてもらうことになった。