秋祭り
5
その日は、めずらしく4人が寮の食堂に集まった。 最近はエアが食堂に来る時間をずらしたりして、ジルと鉢合わせすることを避けまくっていたが、 この日はトォルに怖い顔で迫られて、食堂に連行された。 そこにはすでにジルとニィルが並んで座っていて、エアはジルから離れるようにしてトォルの隣に座った。 仏頂面で黙々と食べるエアをよそに、三人は秋祭りの話で盛り上がる。 「そうだ、エア。今度こそ俺とダンス踊れよな」 唐突に、トォルがエアに話を振った。 ダンスという言葉にエアは食事の手を止める。 脳裏に浮かんだのは、夏至祭のダンスと、この間の夢。 しばらくの沈黙の後、 「悪い。俺、女役しか踊れねーし」 と言うと、えー、とトォルが不満げな声をあげた。 「僕が教えるよ」 思いがけない言葉に、エアはつい顔を上げて、ジルの顔を見てしまった。 ミント色の瞳が、まっすぐにこちらを見ている。 「夏至祭の時に、約束したからね」 やわらかく微笑まれ、エアは夕暮れ色の瞳を揺らして、ふいと目を逸らした。 「別にダンスなんか踊れなくたって」 ぼそぼそと断ろうとした途端、ノームたちから盛大なブーイングが起こった。 「てめー、俺と踊りたくねーってのか!」 「そうだよ、エアだってシルフ王家の王子様なんだから。リードの仕方くらい教えてもらいなよ」 めずらしくニィルまでもが、ジルに教えてもらえと迫る。 これ以上は断りきれず、エアはしぶしぶその晩、下の広間の鍵を借りて、ジルにダンスを教えてもらうことになった。
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