秋祭り
8
今までジルに教わった体位を一晩で全部網羅したと思う。 エアはジルとニィルの部屋に運ばれて(ニィルはいなかった)、 互いのスピリットを交換したために肌寒く感じる身体を、逆に暖かくなったジルの身体に包まれながら、 裸で抱き合ったまま眠った。 次の日、エアは当然のごとく、起き上がれなかった。 ジルは普通に学校に行ったが、昼休みに寮に戻ってきたりして、甲斐甲斐しくエアの世話を焼いた。 夕方になってようやく起き上がれるようになり、あちこち痛む身体を引きずりながらも、 授業が終わって早々に戻ってきたジルに促されて、トォルとニィルがいる部屋 ――普段はトォルと自分の部屋なのだが――に向かった。 身体の倦怠感だけではなく、ジルとのことを言うのは気が重かった。 特にトォルが自分をみるなり、赤い顔で目を逸らした時にはショックだった。 泣いて怒られ、別れてやる、となじられるかとおもった。 しかし。 「…ジルとのことは許してやるから、でもちゃんと俺を優先すること!じゃないと本当に別れるからな!」 顔を逸らしたまま、怒ったようにそう言われた時には驚いた。 あとあんまりあからさまに痕つけてくんなよ!と言われて初めて、はだけたシャツから鬱血の痕がたくさんのぞいていることに気付いた。 「ジルの恋人は僕だから。仕方ないからちょっとだけなら貸してあげるけど、でも覚悟してね?」 何の覚悟をしろというのか、ニィルは愛らしい顔でにっこりと黒い微笑みを浮かべてそう言って、エアをぞっとさせた。
その日の夕食。 「許した途端にこれかよ」 ちょっと目を離した隙に、食堂で二人の世界を作っている双子に、トォルはうんざりした表情で言った。 エアはジルに大好物のオムレツを食べさせてもらっている。甘え放題だ。 「悔しいけど、二人ともすごくいい顔しているもんね。 僕が好きになったのは、エアのことを溺愛しているジルだから仕方がないよ」 無理に引き離して、よけいに燃え上がらせるのも癪だしね。 ふたりの視線の先で、エアの口元についたケチャップをジルが舐めとり、そのまま二人は熱いキスを交わしていた。
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