おしおきジル編その2
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敏感な部分を針で穴を開けられる痛みと恐怖は、初めて身体を繋げた時よりも鮮烈だったが、 目もくらむような快楽の後、エアの身体には新しくつけられたピアスと共に甘い疼きが残された。 珍しくパジャマをきっちり着て、一人で自分のベッドに潜り込むエアを、 同室のトォルは不審げな目で見たが、こんな身体をさらせるわけがない。 一晩でピアスの感覚にはだいぶ慣れたが、うっかり触れると感じてしまうので、 バスルームで慎重に着替えた。 だが、ジルのおしおきは、こんなものでは終わらなかった。
その日の午後にはルゲイエ先生の天文学の授業があった。 「トォルといると、エアがまた寝るといけないから」 エアを見張ると言って、ジルはエアの隣に座った。 昼食を食べた後の、いちばん眠くなる時間。 しかも先生は眠りの精のルゲイエだ。彼を取り巻く眠りの砂が、生徒たちを眠りの湖へと沈めていく。 そんな中、だがエアは寝られるはずがなかった。 乳首と先端を引っ張られる感覚に、エアは両手で口を塞ぎ、喘ぎ声を必死に押し殺した。 昨夜つけられた、三つの金の輪状のピアス。それには金の鎖でつなげられ、鎖の端は今ジルの手にあった。 ジルが鎖を引っ張る度に三点が同時に引っ張られ、エアを責め立てた。 (ちゃんと授業を聞いていないと、またおしおきだよ) 頭の中にジルの声が響いてきて、エアはびくりと身体を揺らした。 そっと隣を伺うと、ジルはエアの方を見向きもせず、すました顔でノートをとっている。 これ以上何かされるのはごめんだと、エアも正面を向き、ペンを取る。 だが気まぐれに鎖を引かれ、弱い部分を刺激されては、とても授業を聞くどころではない。 (昨日、ルゲイエ先生と何してたんだ?) 鎖でエアの弱点を引っ張りながら、ジルが尋ねてくる。 (だから、授業受けていただけだって…!) 昨夜もさんざん責め立てられながら繰り返した弁明を、また繰り返す。 (ふうん…ベッドの上で足まで絡ませ合って、ね) 同じことを何度も聞かれるということは、信用されていないのか。 だが何度聞かれても、ルゲイエとはやましいことは何もない。 最愛のジルに疑われて、エアの夕暮れ色の瞳が涙でぼやけた。 (きみは僕のことを八方美人だっていうけれど。 きみは一見不愛想のようでいて、その実甘えん坊で隙だらけだから、心配だよ) ため息交じりの兄の声が頭に響いてきたその時、 ふいにルゲイエの声が鼓膜を震わせた。 「エア、どうした?具合でも悪いのかい?」 気が付けば、闇色の髪に闇色のローブをまとったルゲイエが、講義を中断して、心配そうにエアを見ていた。 つられて他の生徒たちもこちらを見ていて、エアは慌てて涙をぬぐった。 「気分が悪いなら保健室に」 「いえ、大丈夫です」 ルゲイエの気遣いに答えたのはエアではなく隣にいたジルだった。 「まだ自分の中の炎属性をうまく制御できないだけです。 どうぞ授業を続けてください」 クラス委員長ににっこり笑って促されれば、ルゲイエもそうかい、くれぐれも無理はしないように、 と言って講義を再開するしかなかった。 保健室に行き損ねたエアは、教室でさらなる責め苦を与えられることになった。 ズボンのジッパーを降ろされ、すでに先走りで濡れている性器を、美しい指に絡め取られ、引きずり出される。 絶妙な力加減で握られ、扱かれる度に、ピアスのついた先端と、鎖でつながれた乳首も同時に刺激されて、 エアはペンを握りしめたまま、俯いてぎゅっと目を閉じ、喘ぎ声を必死でかみ殺した。 兄の指をも濡らす、いやらしい水音が、周りの皆にも聞こえてしまわないかとドキドキする。 ジルはすました顔でノートを取りながら、エアの先端に指を差し入れ、くびれの部分と一緒に、強くつまんだ。 「っっ…!」 強い刺激に、エアは息をつめた。常ならばイッてしまうところだが、イけない。 根元には夕焼け蜘蛛の糸がきつく巻かれていて、射精を許されなかった。 すらりとした手指は平然と性器をなぶり続ける。 ここで出しても困るが、射精できないのはつらい。 声を上げることも許されない状況だから、なおさらつらかった。 (ジル、頼むから、もう許して) 俯いて、涙をぼろぼろとこぼしながら、エアはジルに懇願する。 (ルゲイエ先生の授業で、金輪際もう寝ないって誓う?) (誓う。我らが妖精王オベロンにかけて誓うからっ…) 隣でジルが微笑う気配がして、エアを甘く苛んでいた指が性器から離れた時、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
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