ひめごと
――風の精霊達が住む国に、双子の王子がいました。 アクアマリンの髪と瞳を持つ王子は氷の風を操り、 夕暮れ色の髪と瞳を持つ王子は炎の風を操りました。 生まれる前から二人は一緒で、 寄宿舎付きの学園に入学してからも一緒で、 二人はこの先も片時も離れず、ずっと一緒に生きていくのだと信じていました。
平気なはずがない。 ついこの間まで自分がいた場所、ジルの隣にニィルがいるのを見れば、内心ちくりと心が痛んだ。 けれど、そんなそぶりを少しでも見せようものなら、足腰立たなくなるまで「お仕置き」されるのはわかっていた。 「ニィルに妬く必要なんかないくらい、愛してあげるからね♪」 もうわかったから許して、と泣きながら懇願しても、この兄はにっこり笑って、さらに甘美で苦しい折檻を続けるのだ。
「んっ…」 トォルにもらった属性封じの指輪を身に着けて、再び触れ合えるようになってからというもの、 ジルはエアを二つの礼拝堂の間にある地下の隠し部屋、 『ル・シャンブル・ルージュ』によく連れ込んでは、身体を重ねた。 「ぁっ…ジル…」 ふかふかの赤い絨毯の上には、ピンク色の長い髪が散っている。 硬く尖った乳首に歯を立てられて、エアは身を捩った。 エアの身体を知り尽くした手のひらが、ゆっくりと脇腹をなぞり、脚のつけ根、内腿を撫で、 それから焦らすような手つきで奥の双球に触れた。 「あ…んっ」 急所を握られて、身体の力が抜ける。 そこを愛撫する手つきはあまりに優しくて、物足りなかった。 「あ…兄貴…」 「どうしてほしい?エア」 わかっているくせに意地悪く問う兄に、エアは夕焼け色の瞳を潤ませる。 でもこういう時は、ちゃんと言わないと、絶対に許してくれないのだ。 「…前も…触って…気持ちよくして…」 「よくできました」 そこは一度も触れられていないのに、すでに腹につきそうなほど反り返り、先走りで濡れそぼっていた。 脚を大きく開かされ、はしたなく反応している場所に、強い視線を感じた。 羞恥に震えながらそこに触れられるのを待っていたら、いきなり熱く湿った口腔に飲み込まれて、 エアは無防備な嬌声を上げると同時に、ビクッ大きく身体を跳ねさせた。 その身体を押さえつけ、ジルは若い雄を絶妙な舌遣いで愛撫していく。 「あっ、ぁあんっ」 彼以外にされたことなどないから、上手いか下手かなどわからない。 でも大好きな兄にそんなふうにされては、とてもこらえられるものではなかった。 エアは白い内腿を震わせ、甘くかすれた叫び声をあげながら、ジルの口の中で果てた。 足元でジルが喉を鳴らして快楽の証を飲み下すのを、エアは息を切らしながらぼんやりと聞いた。 「ジル、俺も…」 ジルのものを愛したいと、のろのろと身体を起こせば、それじゃあ今度はこの体位で、と体勢を入れ替えさせられた。 足の方に頭がくるように跨がらされ、エアは目の前でそそり立っている屹立を咥えこんだ。 「あっ」 それと同時に、さっき果てたばかりの己を再び口腔に包み込まれて、エアはびくりと腰を揺らす。 「続けて」 うながされて、ジルに教えられた通りに、歯を立てないように気を付けながら、舌と口腔全体を使って肉棒をしゃぶる。 ジルがいつもしてくれるように、舌を絡めて強めに扱き、頭全体を使って強く吸い込みながら抜き差しした。 大きさも形も、自分のものと変わらないのかもしれないけれど、 口の中のそれがジルのもので、自分の愛撫で屹立が増し、そしてこれを受け入れるのだと思うと、 奉仕をしながら無意識に腰が揺れた。 「あっ!あぁんっ…」 冷たいぬめりを纏った指が、物欲しげにひくつかせていた入り口をなぞり、エアは思わず分身から口を離して喘いだ。 「こら」 ぴしゃりと小ぶりな薄い尻を叩かれる。 そんなお仕置きにも感じてしまっているのは、そこを咥えているジルにはばればれだろう。 エアは羞恥と快感で何も考えられなくなりながらも、必死でジルの昂ぶりに舌を絡ませた。 ジルから出されたものを飲みたい気持ちと、今すぐ入れて欲しい気持ちとで、 エアの身体は昂りを口で愛しながら熱くなっていたが、己の奥を探る指が増え、抜き差しが激しくなると、 とても最後まで奉仕を続けていられなくなった。 「ジル…ジル…もう…いれてくれっ…」 なりふりかまわず、涙をぼろぼろとこぼしながら懇願すると、身体を反転させられた。 再び床の上に仰向けにされ、膝が胸に付くほど折り曲げられて、物欲しげに疼く、ぬかるんだ入り口に、 ようやく望んだものを与えられた。 「あんっ、あんっ、あっ」 ジュプ、ジュプ、と卑猥な音を立ててジルの昂ぶりが出入りする。 口にしていた時よりさらに固く大きく感じる熱が粘膜を擦りたてる度に、頭の中に火花が散るようだ。 「あんっ、あんっ、ジルッ…」 「気持ちいい?エア」 いつもは穏やかなジルの声が、今は息を弾ませながら、欲情に濡れている。 そんな彼の声が大好きで、エアは羞恥も忘れて乱れてしまう。 「あっ、いいっ…いいっ…ぁあんっ」 ジルの動きに合せて、夢中で腰を振った。 もうどこまでが自分でどこまでがジルかもわからず、ひっきりなしに喘いだせいで喉も痛かったが、 ジルと一緒に今の快感をのぼりつめること以外に、何も考えられなかった。 ずっと繋がっていられたらいいのに、という想いをよそに、最後の時はやってくる。 ジルに抱えられている内腿が、細かく痙攣するのが、絶頂の合図だった。 「あっ…ジル…ジルフィ…ッ」 細身ながらしっかりと筋肉のついた身体にしがみ付き、エアがぶるっと震える。 「エア…ッ」 切羽詰まった声でジルが呻き、エアの中に精を放った。 身体の奥に熱い液が広がるのを感じて、エアもまた二人の腹を熱い精で濡らした。
二人は抱き合ったまま、互いの荒い呼吸と早鐘のような鼓動を聞いていた。 そうしているうちに、ぴったりと合わさった身体から、呼吸と鼓動がだんだん落ち着いてくるのがわかる。 交わって互いのスピリットを交換したせいで、普段ひんやりとしているジルの身体は暖かくなり、 逆に、普段暑がりなエアの身体は冷たくなっている。 肌寒く感じる身体を、暖かい身体が優しく抱き寄せた。 だるい腕を上げて、汗でしっとりと濡れたジルの背中を撫でながら、 優しい雨のように降り注ぐキスに応えていた、その時。 ガタン。 入り口で物音がした。 そこにははちみつ色の髪をしたノームの王子とココア色の髪をしたその従兄弟が、 二人とも真っ赤な顔をして立ち尽くしていた。
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