Exotic Asia
2
「や・・・めッ」
部屋に連れ込まれるなりベッドに引き倒され、帯を解かれた。
抵抗しようにも重い着物が枷になって思うように暴れることができない。
直江はそれをいいことに乱れてはだけた裾から伸びるむきだしの太ももに手を這わせた。
しっとりと汗ばんだ内腿がぴくりと反応を返す。
「よせッ・・・オレは仕事で」
「あなたときたら、会うたびにそれだ。この間イエメンで「仕事」したときも、隣国なのに顔すら見せずに帰りましたね」
急所を乱暴に握りこまれて、高耶は呻いた。暴君の手のひらはそのままいたぶるように高耶の分身を弄んだ。
「んなの・・・」
オレの勝手だ、と続けようとした言葉は、はだけた襟から忍び込んだ指に乳首を抓られて甘い悲鳴に変わった。
「かと思えばこんな姿で男をたらしこんで・・・この淫らな身体が誰のものなのか、たっぷり思い知らせてあげますよ」
背後から首筋を噛まれ、裾を割った手で双丘の谷間をなぞられる。
その奥まった部分――正確にはその入り口に留められた小さな石の感触を確かめて直江はほくそえむ。
「いい子だ――ちゃんとつけていますね」
それはいつか、高耶への誕生日プレゼントだと言って、無理やりつけられたルビーのピアスだった。
外したらただではおかないという直江の脅しに屈したわけではない。
だがそれだけに、あえて忘れたふりをして外さなかった自分がひどくあさましい人間に思えた。
そんな高耶の葛藤も知らず我が物顔に入り込んでくる指を内部が無意識に締め付ける。
数ヶ月ぶりの愛撫に心は拒否していても身体は飢えていた。
性急で乱暴にまさぐる手にもむしろ感じていた。
前と後ろを同時に擦りたてられて、高耶は両足をしどけなく開き、乳首を舌で転がされてあられもない声を上げた。
執拗な愛撫が高耶の思考を霞ませる。指の腹が高耶のイイところを容赦なく刺激した。
「ァ――ア・・・ッ」
熱い楔が内部を穿った。
忘れようもない熱を打ち込まれて高耶は震えた。
それを歓喜のためのそれと知る前に動き始める。
「アッ・・・アッ・・・」
「言いなさい。あなたは誰のものですか?」
傍若無人に腰を動かしながら直江が問う。
高耶は首を振った。何度痴態をさらそうと、屈服を強いられても。彼にだって譲れないプライドがあった。
「タイガーズアイ・・・」
強い意志を秘めた瞳にひきこまれるように、直江が呟く。
「どんなに美しく着飾っても、あなたの本性はごまかせない。まさに夜の森の中で燃える瞳、神が与えた神秘の炎ですね」
だが直江もそれで退いたりはしなかった。
華奢な腰に太い楔を何度も打ちつけて追い上げ、一方で高耶の根元を親指と人差し指で堰きとめた。
「ッ・・・直江・・・ッ」
激しく追い立てられる一方で欲望の出口をふさがれて高耶は身悶えた。
快楽も過ぎれば拷問になる。一度も達してない上に、堰き止められたまま身体だけは追い上げられて、思わず直江に懇願する。
だが直江は返事もしない。望む一言を言わない限り、ずっとこうして高耶を苛むつもりに違いなかった。
「あなたは誰のものですか?」
直江は繰り返し、高耶の指を取って入り口に這わせた。
生々しく繋がって、激しく出入りしている肉と・・・口いっぱいにソレをほおばっている部分に留められた、硬い石の感触。
高耶の頬がかっと熱くなった。嫌がる指が離れるのを許さず、さらに高耶を追い詰める。
達けない苦しさに、ぼろぼろと涙がこぼれた。
「おまえのものだ・・・ッ」
欲望に負ける悔しさと、屈服を強いられる屈辱に顔を歪ませながら高耶は口走った。
敗北感に打ちのめされる高耶をよそに、直江は満足そうに口端を吊り上げた。
「その言葉、忘れないでくださいね、高耶さん」
堰き止めていた指を外し、両足をMの字に開かせるといっそう激しく穿ち始める。
もうとっくに限界に達していた高耶は嬌声を上げると、錦の着物の上に己の欲望を撒き散らした。
性懲りもなく手をのばしてきた直江の手を邪険に払いのける。
「仕事中だと言わなかったか?」
どうやら我に返ったらしい。何度目かの情交ですっかり裸に剥かれた高耶はさっきまでの痴態はどこへやら、憎憎しげに直江を睨みつけた。
「まさかこんなところでおまえに会うとはな。見損なった」
侮蔑を含んだ目で見られて直江も黙っていられるはずがない。
「その見損なった男の下で先刻まで喘いでいたのはどこのだれですか」
高耶の頬がかっと熱くなり、右手が動いた。とっさに直江の手がそれを掴む。
高耶の手には先が鋭く尖ったかんざしが握られていた。先刻までかつらにさしていたものだ。
このひとを抱くのはいつも命がけだな、と内心ため息をつきながら直江は横向きに寝そべった姿勢で高耶を見上げた。
「実は、私もなぜこのパーティに呼ばれたのかわからないんです。あなたがここにいるということは、やはり裏に何かあるんですね?」
おそらく自分は他の女性客やジャーナリストと同様、目くらましに使われたのだろう。
どちらにしろパーティなどそう楽しいものではないにせよ、ダシに使われたのはいささかおもしろくない。
高耶は呆然と直江を見下ろした。
「まさか・・・おまえ何も知らないでここに来たのか?」
高耶の今回の任務は世界規模の人身売買組織の解体と首謀者たちの暗殺だった。
彼らはおもにアジアを拠点としてスラムにいる子供達を攫い、賃金のいらない労働力や性奴隷を欲しがっている顧客に売りさばく。
中でも高値で売れそうな「商品」は不定期に開かれる「オークション」で競り落とされる。
英国情報部の情報網をもってしても組織の顔ぶれや本拠地は不明で、神出鬼没に行われるオークションの時だけが組織を叩くチャンスだった。
「ではあの主催者が?」
「わからない。へたにつついて逃げられたら元も子もないから、客にあたりをつけてオークション会場にもぐりこむつもりだった」
そう言って、直江を睨みつける。
時計を見るとすでに0時を少し過ぎている。入り口はすでに閉ざされていることだろう。
高耶はクローゼットから誰のものかはわからないが比較的動きやすそうな普段着を見つけて身に着けると、直江の方には見向きもせずにドアに向かった。
が。
「何でついてくるんだ」
「お手伝いしますよ」
招待客である自分がいた方が何かといいでしょう?と微笑む直江に高耶は目を眇めた。
「邪魔はするなよ」
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アサシン部屋へ
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