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うなじに舌を這わされて、身体がびくりと震えた。男の大きな掌が、滑らかな肌の感触を
楽しむように這い回る。
「アン…ッ」
熱い口腔に乳首を含まれ、強く吸い上げられた瞬間、自分のもとのは思えない高い声が
でた。慌てて息を飲み込み、羞恥と悔しさに唇を噛む。その口を割らせようとするかのように
ことさら音を立てて乳首をねぶり、固く勃ちあがった葡萄粒を舌で転がした。もう片方にも
手を伸ばし、親指と人差し指の腹で押しつぶす。高耶は男が触れたところから湧き上がる
未知の感覚を振り払おうと固く目を閉じた。
舌は徐々に下に下りていく。脇腹に赤い筋が走っていた。皮一枚を切っただけで、血も
すぐに止まった。日に焼けた肌にくっきりとついた傷跡を舐めあげると、しみたのか、
くぐもった呻き声を上げて身を捩った。構わず繰り返していると疼痛に耐える呻きに熱い
吐息が混ざる。触れる前から勢いよく頭をもたげ、 ビクビクと震えていた中心を口に含むと、
しなやかな身体が弓なりに反り返った。
「アッ…アアン…ッ…やめ――」
感じいった声がぴちゃぴちゃと濡れた音に入り混じる。熱い口腔は容赦なく高耶自身を
吸い上げ、舌先で筋や先端の裏側を刺激し、中身を絞り出そうと扱く。
絶頂の予感に、高耶はぶるりと身を振るわせる。身を捩って逃れようとしても、男はそこ
から顔を離そうとしない。こんな男の口の中に出すのは死ぬほど嫌だ。だが我慢の
きかない若い身体がそう長くはもたないと告げていた。
「ァ…も…でるっ・・・!」
下腹に顔を埋めた男の髪を両手で掴み、やがて容赦なく吸い上げてくる熱い口腔の中に、
己の欲望を吐き出した。
最後の一滴まで飲み干した男はようやくソコから顔を離す。無理やりイカされた屈辱と
決まり悪さに高耶は露骨に顔を背ける。その顎を捕らえてこちらを向かせると、強引に
唇を重ねた。有無を言わさず進入してくる舌と一緒に苦い味が口内に広がる。それが
先刻放った自分のものだとわかると、高耶の目尻にうっすらと涙が溜まった。
そんな高耶の心中などお構いなしに、直江の不埒な指は後庭をまさぐる。すでに行為を
知っているソコは入り口を撫でる指の腹に反応してヒクヒクと蠢いている。
「ヒッ…」
指先を少し含ませると、高耶の身体は恐怖に強張った。直江は高耶の身体を返すと、
獣の体勢にさせた。肩を沈み込ませ、尻だけ高く掲げさせる。あまりに屈辱的なポーズに
高耶の身体は怒りに震えた。
双丘を両手で押し広げられ、露になった入り口に熱く濡れたものが進入してきた。思わず
前に引いた腰を支えた両手で引き戻し、よりいっそう深く舌を進入させる。
「ァッ…アン…嫌だ・・・っ」
首筋まで赤く染めて高耶は首を振る。十分潤ったとみると、顔を離して指を挿入した。
骨ばった長い指が熱い内部を掻きまわす。全てを知り尽した指がある一点を突くと、
高耶は一際高い声を上げて悶えた。集中してそこを攻めると、それまで苦痛が混じって
いた声は艶を帯び甘えるようなものに変わった。指を増やすと、迎え入れた内壁は
擦れる関節や指先から快感を搾り取ろうとするようにきゅうきゅうと指を締めつけた。
指の抜き挿しに合わせて肉襞が伸縮し、華奢な腰がねだるように揺れた。
直江は指を抜くと高耶の身体を仰向けにし、両膝を抱えると胸につくほど折り曲げさせた。
「ア――アアアッ…!」
慣らしたそこに己自身を埋めていく。それでも中は相当狭く、蕩けそうに熱い。きつい
締め付けで貪欲に精を絞りとろうとする動きに、何もしなくてもイってしまいそうだ。
高耶の中でいっそう大きくなるのを感じながら、激しく腰を使い出した。高耶の嬌声には
もう否もない。男の猛りきった肉棒で突かれる度に上げてしまう濡れたあられもない声は
もう自分でもどうしようもなかった。あらぬところを擦りたてられる快感に理性が蝕まれて
いく。しなやかな腰はいつのまにか、力強い男の動きに合わせて淫らに動いていた。
「ハッ…ァアン…ァンッ…アッ…」
高耶の両足が直江の腰に絡みついた。獣と化した二人は一体となって同じ動きを
繰り返す。二人の荒い吐息と繋がっている場所から発する濡れた音、そして肌を
打ちつける乾いた音が室内に響く。二人とも完全にお互いの身体に溺れているかの
ように見えた。
固く閉じていた高耶の目がゆっくりと開く。少し潤んだその漆黒の瞳は、だが鋭い光が
宿っていた。
直江は髪を乱して首筋に顔を埋めている。お互いの絶頂が近いのが繋がっているところ
から分かる。
シーツを掴んでいた高耶の右手が、ナイトテーブルに伸びた。
テーブルに乗っているのは銀色のベレッタ。先刻まで直江が持っていた、高耶の銃だ。
最後の攻勢に喘がされながら、その銃を掴み、安全装置を外した。
直江は気づかない。それとも気づかないふりをしているのだろうか。
後頭部に照準を定め、揺さぶられながら冷静な瞳で見つめ返してくる高耶に、息を乱した
直江がようやく気づき――そして深く口づけてきた。
荒々しく舌を絡ませてくる男を、高耶はしばらく目を開けたまま、じっと見つめる。野蛮に
腰を使いながら全身で高耶を追い上げる熱に目を細め――やがて瞳を閉ざした。
わずかに軋み続けるベッドの下に、安全装置を外したままのベレッタが転がる。シーツを
掴んでいたもう片方の手も離すと、逞しく動く男の背中に両腕をまわした。
「アッ・・・ア・・・アアアッ――!」
やがて訪れる絶頂。ほぼ同時に欲望を吐き出すと、二人はそのままベッドに沈みこんだ。