Outfox
3
睨む高耶の髪の毛の先からは、拭いきらなかった水滴がぽたぽたと落ちている。 ここに来て息が整った時、高耶はここから出て行こうとした。まったく正気の沙汰ではない。 そう言う直江自身もかなり埃まみれだった。無言でバスルームを出た高耶と入れ違いに こうして高耶と顔を合わせたのは2ヵ月ぶりだ。 「公務のついでに少々買い物をね――それにしても、こんな日まで働かせるんですか、あなたの職場は。」 溜息混じりに吐かれた直江の言葉に、高耶は首をかしげた。 「?」 きょとんとした高耶に、今度は直江が呆然とする番だった。 直江は高耶の左手を取ると、手の中に持っていたそれを薬指に滑らせた。 「お誕生日おめでとうございます」 恭しく手を取って、リングを嵌めた指にくちづけた。
「…何の真似だ」 高耶の目が険悪に眇められた。 「婚約指輪です」 叫ぶなり、指輪を抜き取って投げ捨てた。 この男はいつのまに自分に対してこんな態度をとるようになったのか。 声もなく、小刻みに震えながら睨みつけてくる高耶を見て、直江はふっと表情を改めた。 「怒っているのは…本気じゃないから?」 高耶は踵を返した。服をひっつかんで部屋を出て行こうとしたが阻まれた。 「答えて、高耶さん。俺の本気が欲しい?」 触れられるのも厭わしいとばかりに暴れる高耶を、直江は頑強な二の腕で羽交い締めにした。 「あなたを試したことは謝ります。 あなただって俺を疑ったくせに、と耳元で低く囁かれて、高耶の頬に朱が走った。 「こちらから出向こうとおもっていたんですが丁度よかった。誕生日プレゼント、受けとってくれますよね?」 高耶は頭一つ分高い相手をはっきりと睨みすえた。 「指輪なんか受けとらねーぞ」 釘を刺したつもりだったが直江は余裕の表情だ。 「さっきのは冗談ですよ。だいたい今さら婚約指輪もないでしょう。あなたはすでに俺のものなんだから」 罵声は唇で封じられた。
うおーはずかちー!!(悶)このバカップル丸出しな痴話喧嘩、まさしく番外編仕様・・・。 |