緋襦袢で四十八手
12. 寄り添い(よりそい)
衣擦れの音と共に、隣に鴆が滑り込んでくる気配で気が付いた。 行為の最中から記憶がないから、また失神したのかもしれない。 いつの間にか身体は清められ、赤い襦袢を着せられていた。 職業柄なのか、この男の手際の良さにはいつも感心させられる。 「大丈夫か?」 まだぼんやりとしているリクオに、穏やかな口づけの雨が降る。 「無理させちまったみてぇだな。ごめんな」 言葉よりも雄弁なその行為をくすぐったい気持ちで受けていたリクオは、 頭の下に敷かれた硬い腕の感触に、夢見心地な意識をわずかに現実に戻した。 「腕、抜けよ。しびれるだろ」 いつ急患が来るかわからないのに、薬師の腕をしびれさせるわけにはいかない。 だが鴆はやだね、と言ってリクオの唇をついばんだ。 「オレだけの特権だろ、あんたにこんなことができんのは。」 こうして間近で、共寝の後の色っぽいあんたを見られんのも。 鴆は幸せそうに微笑んで、いとおしそうに頬に触れた。 「オレ以外にこんな顔みせんじゃねーぞ」 そう言われても、どんな顔をしているのか、自分ではわからない。 けれど、今の鴆の顔だって、ほかの誰かに見せたくないと思うから、つまりはそういうことなのかもしれない。 いささか硬い腕枕に頭をあずけながら、リクオは降ってくる口づけに目を閉じた。 |
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