緋襦袢で四十八手
29. 理非知らず(りひしらず) 後
「あっ…あんっ…」 骨ばった男の指は、乱暴な動きで内部をかき回す。 痛みを感じる程なのに、リクオの身体は勝手に快感を拾い、三本の指を歓迎するように締め付けた。 だが指を与えたのは愛撫のためなどではなく、ただ挿入しやすくするためだと言わんばかりに、 肉洞がほぐれたと見るや無造作に全ての指を引き抜き、縛った腿を抱えて切っ先をねじ込んだ。 「ああっ…あぁんっ…!」 脚を限界まで開かされ、猛ったものが無遠慮に奥を穿ってくる苦しさに、待ってくれと切れ切れに訴えるが、 聞き入れられることはなかった。 脚を開かされたことで、内腿の傷口がビリリと痛んだ。 だが内部を押し開かれる圧迫感に比べたら何てことはなかった。 熱くて大きな、堅い肉棒でいつもより奥まで乱暴に突かれる。 こんなのは嫌だ、と頭では思うのに、受け入れているそこはそれとは裏腹に、中で暴れている昂りにもっととねだるように絡みつく。 激しく揺さぶられる度に、はだけた赤い襦袢の絹布に擦れる乳首も、触れられてもいないのに、物欲しげに堅く勃っていた。 「こんなにぎゅうぎゅう締め付けて…ひどくされて感じんのかよ。見かけによらずやらしいんだな」 何故、自分はこんな扱いをうけなければならないのか。 自分をこんな身体にした、その張本人から蔑むように言われて、悔しさとやるせなさで、ぎゅっと閉じた目の端から涙がこぼれた。 「オレ以外の奴にそんなに犯られてえのか。 こんなところに傷つくりやがって。 大将が敵陣に突っ込むなって何度言わせりゃ気が済むんだよ」 冷たい鴆の声よりも、乱暴な抽挿よりも、太ももに食い込む指が与える痛みよりも、 内部を割り開く怒張の燃えるような熱が、痛みとともにリクオの心をも抉った。 「もうしません、って言えよ。そうすれば優しくしてやる」 ことさら乱暴に奥を突きながら、鴆が迫る。 一言も洩らすまいと歯を食いしばれば、傷口をつかまれた。 気が遠くなるような痛みと熱を感じながら、リクオはとうとう、声を押し殺したまま失神した。
気がつけば戒めは解かれて、清潔な襦袢に着替えさせられ、鴆の腕の中にいた。 最中に開いたと思われた腿の傷も、手当しなおされたのだろう。ひどい痛みはなかった。 優しく髪を梳く大きな手は心地よく、緑色の瞳は、いつもどおりの穏やかなまなざしでリクオを見つめている。 「…大将は身体を張ってこそ、だろ」 発した声は、別人のようにかれていた。 大将の自分が先陣を切るからこそ士気も上がるし、第一、戦いの最中に後ろにひっこんでいるのは性分ではない。 いくらおまえの頼みでもそれは聞けないと言えば、鴆はリクオを抱き込んだまま、わかったよ、とため息をついた。 「…じゃあせめて、出入りの時にはももひきをはいてくれ」 「断る」 |
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