緋襦袢で四十八手
38. 網代本手(あじろほんて)
襦袢一枚になったリクオを抱き寄せ、褥に横たえた。 行燈の薄明かりの中、白い身体に纏わりつく赤い絹布はとても扇情的だ。 それでいて鴆を見上げる、しっとりと濡れた金色の瞳と、わずかに甘さを残す頬の線は、 毎晩男に抱かれているとは思えないほど清らかに見えて、鴆の心をいつも波立たせる。 彼にとって自分が初めてで唯一の男だとわかっていても、とても安心などしていられない。 リクオが他の誰かと、と考えただけで、気が狂いそうになる。 「鴆…?」 訝しむように見上げるリクオに、鴆は己の昏い心の内を押し隠して、形のよい唇に口づけた。 唇を濡らすように何度か啄み、舌を差し入れると、リクオの舌がためらいがちに迎え出る。 教えたとおりの舌の動きに安心すると同時に愛しさが募った。 滑らかな口腔や、綺麗な歯列、熱く潤う口蓋を一つ一つ丹念に舌で愛撫して、舌の根元にたまった唾液を啜った。 そして再び舌を絡め、強く扱きあげ、時折、口をすぼめて強く吸う。 濃厚な口づけにリクオが頬を紅潮させて夢中になっている間に、腰帯を緩めた。 緩んだ合せ目から手を差し入れ、すでに硬く尖っている乳首を二つ同時につまむと、組み敷いた身体がびくんと跳ねる。 「んっ…んんっ…!」 最初に快楽を教え込んだそこを強く抓ると、リクオはくぐもった悲鳴を上げながら身体をよじらせた。 すでに硬くなっている互いの雄が、布越しに擦れあう。 そのまま擦りあわせながら二人の下帯を解き、二本まとめて扱きながら今度は手と唇で乳首を愛撫した。 「あっ…鴆っ…」 内腿を震わせ、早々にリクオが達した。その瞬間の顔を、目に焼き付けるようにじっと見つめる。 ぐったりと弛緩した身体の奥に、薬液を塗り込める。狭く硬い内壁を指の腹で擦っているうちに、 そこは柔らかくうねり始め、指を包み込むように締め付けた。 指の動きに合わせて、襦袢を纏いつかせた腰もねだるように動く。 もっと指を受け入れるために脚を広げたために、襦袢の裾が割れ、中から目を灼くような白い太腿がこぼれ出た。 裾からのぞいているのは脚だけでなく、そのつけ根からそそり立つ分身は、 後ろへの愛撫だけで、先端から透明な液をとめどなく零している。 指先がイイところに触れる度に、わずかに開いた唇から切なげな声を漏らすリクオは、もう指だけで達してしまいそうだった。 鴆は指を引き抜き、優美な形の割に硬くて重い脚を抱え上げた。 もう欲しい、と訴える目を見つめながら、屹立を中に埋めていく。 「初めての時もこの体勢だったよな…」 欲望に掠れた声でそう囁いて、鴆は動き始めた。 「あっ、あんっ、あんっ、あんっ」 最初から激しく突かれて、リクオはすがるように鴆の背中にしがみ付く。 今までいろいろ試して来たけれど、リクオはこの体位が一番好きなのはわかっていた。 他のどの体勢より安心して、素直に感じて乱れている。 そんなリクオを見ながら彼の熱を感じられるのが、鴆にはうれしい。 この上ない幸福感に満たされながら、鴆は少しでもこの幸福と快感が長く続くようにと、熱く蕩ける内部を穿ち続けた。
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