緋襦袢で四十八手
43. 本駒がけ(ほんこまがけ)
「今日はこっちに背を向けて座って…ってリクオ?」 鴆の言葉を無視して、リクオは膝を立てて褥に座っている男の上に、正面から向き合うように座った。 両腕を首に回し、そうじゃなくて、と言いかける口を塞ぐ。 色々な体勢を試すのは別にいい。 行為の時にいつも赤い襦袢を着るのだってかまわない。終わった後では必ず正面から抱きしめて、優しい口づけもくれるけれど。 今は正面から抱き合って、互いの体温を感じながらの口づけが欲しかった。 いつになく積極的なリクオからの口づけに鴆は目を見開いていたが、 やがて膝に乗ったリクオの背を支えるように抱きしめると、舌の動きに応えて深く絡ませた。 「んっ…」 舌を絡ませながら、唇を味わうように何度も吸う水音に交じって、くぐもった声が二人の喉奥から時折漏れた。 向かい合って口づけを交わす間に、鴆の手が赤い襦袢の懐に忍び込み、すでに硬く尖った乳首を愛撫する。 感じやすい個所をきつく弄られて、身体はかっと熱くなり、リクオの腰は無意識に動いてしまう。 己の身体の浅ましさに頬まで熱くしていると、もう一方の手が襦袢の裾を割り、脚に触れた。 乾いた大きな手が腿の感触を確かめるようにはい回り、下帯に手をかける。 「あっ…ん」 潜り込んできた指はすでに薬液を纏っていて、長い指が奥に入ってくる感触にぞくりと震えて、 思わず鴆にしがみついた。 中をかき回されるのに慣れて、腰が無意識に指の動きに会わせて動きはじめると、鴆はようやく唇を離した。 「このまま、するか?」 至近距離からの問いにしばらくぼんやりと意味を考え、それから抱きついていた身体を離した。 「…いい。後ろ向くんだろ」 快感で力が抜けかけた腰を叱咤して身体を起こし、鴆に背を向け、膝につかまってまたがった。 「んっ…」 浮かせた腰の下から、指よりもはるかに大きな切っ先が、自分の中へと潜り込んでくる。 鴆に導かれて、根元まで中に沈めてしまうと、立てた膝につかまるようにして、自分から腰を動かし始めた。 鴆の硬い膝に自身を擦り付けるように動けば、鴆もリクオの動きに合せて下から突き上げ始める。 高まる鼓動と共に次第に激しくなる動きに、もはや何も考えられず、 リクオは何度も甘い声を上げながら、鴆の膝にしがみついた。 |
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