緋襦袢で四十八手
7. 碁盤攻め(ごばんぜめ)
ねっとりと甘く、熱のこもった闇が、閨を取り巻いていた。 聞こえてくるのは指を出し入れする秘めやかな水音と、 与えられる快楽に喘がされているリクオの柔らかな嬌声だけである。 「なあっ…もう…鴆…ッ」 赤い襦袢をまとわりつかせたまま、乳首と分身と秘所を同時に愛撫されていたリクオは、 熱くうるんだ目で鴆を見上げた。 「もう、欲しいか…?」 乱れるリクオの姿をじっと見つめる鴆の頬もまた、上気している。 わかりきっているはずの問いに、それでも素直にうなずいたリクオは、 くすぶる熱を持て余した顔を隠すように、鴆にしがみついた。 「そうか。じゃあ」 鴆はリクオの背を優しく撫でてから、リクオを引きはがした。 「あれに手をついてかがんでくれるか」 「…」 示されたカヤの碁盤を見て、リクオは半眼になった。 この部屋に入ってきたときからずっと気になっていたのだ。 碁でもやる気かと思ったが碁石はないし、鴆に尋ねても妙に歯切れが悪かった。 「碁石は今日は使わねえよ。初めてで色々やったらあんたが大変だし…慣れたらそのうちな」 などと訳のわからないことを呟いていたから、何となく、ろくでもないことに使うのではないかとは思っていた。 「どうしたリクオ? …もしかして嫌、か…?」 それまでうきうきと碁盤を示していた鴆は、リクオの表情を見るなり、途端にしゅんとうなだれた。 ものすごく呆れてはいるが、別に怒ってはいない。 っていうか、いい年をした男が、そんなことでうなだれないでほしい。 自分よりも年上のはずのこの男のわがままを、つい聞いてやる気になってしまうではないか。 「べつに嫌じゃねえけど…」 そんな体勢を取らせて何が楽しいんだと、皆まで言わぬうちに、鴆の表情が再びぱっと輝いた。 「いいのか!?」 「ああ…けど」 「じゃあやってくれ!こっちに尻向けて手はここな!」 気が変わらぬうちにとばかりに強引に立たされ、 かと思ったら、広げた足をまっすぐに延ばしたまま、碁盤に手をついて屈まされる。 若くて身体が柔らかいから言われたとおりにできるものの、そうでなければ悲鳴を上げていたに違いない。 こちらに尻を突き出す格好で屈んだリクオの赤い襦袢の裾を、鴆は嬉々としてまくり上げ、 赤い絹布の中から現れた、はっとするほど白い双丘の谷間の奥にある、 すでに柔らかくほぐされている後口に、己の昂ぶりを突き入れた。 「あ…んっ」 先刻までのやりとりで萎えてしまっていた分身は、 強直で内壁をこすりたてられるうちに快楽を思い出し、すぐに頭をもたげはじめた。 肉を打ち付ける乾いた音と、つながった部分がたてるいやらしい水音を頭上で聞いていると、 妙な体勢で貫かれていることも、次第に気にならなくなってきた。 つながった部分から生み出される熱が、思考を甘く溶かしていく。 「あっ、あんっ、あんっ」 「はっ…リクオ…ッ」 打ち込まれる度に、体液とも薬液ともつかないものが中からあふれ出し、襦袢に隠れた内腿を伝った。 こんな体勢を取ることに何の意味があるのかと思いつつも、 いつもよりも興奮した様子で深く激しく抉ってくる鴆の熱の硬さとその心地よさに、 リクオも無意識のうちに尻を突き出し、鴆の動きに合わせて腰を揺らしてしまっていた。
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