あわよくばもう少し
2 「これもかわいいんだけどよー、やっぱ、あると舐めにくいしよー」 「いいから、やるならさっさとやれよっ…」 まばらに生えた、白毛に黒が混じった茂みを名残惜しそうに撫でる男に、リクオは顔を背けたまま促した。 体毛を剃られるなんて男として屈辱以外の何物でもない。 だが、いかにそれが愛撫の邪魔になるかを切々と訴えられ、 恋人同士では別にふつうのことだと諭され、 しまいにはあんたのそこを誰かに見られるなど我慢できない、剃ってしまえば誰にも見せられないだろうと、 いらぬ独占欲までむき出しにされては、いたずらに抵抗するのも無駄に思えた。 腹をくくったリクオのそこに、暖かい泡がのせられ、柔らかく塗り広げられていく。 剃刀を当てられる感触に、ひくりと身体が動いた。 「おっと、危ねえから動くなよ」 「んっ…」 リクオは固く目をつぶったまま、剃刀が陰毛を剃り落していく感触に耐えた。 柔らかい皮膚の上を滑る刃の感触。 その切れ味は見なくてもわかった。 刃物の先に急所を晒している本能的な恐怖と、あるべきものを剃られてしまう屈辱感と、 そして認めたくはないが、剃られる快感も確かにあった。 鴆は一言も発さず、慎重に剃刀を動かしている。 見なくても、そこに向けられている鴆の熱い視線を、痛いほど感じる。 剃られている間中、リクオの分身は痛いほどに張りつめて、先端からとめどなく滴を零しているというのに、 鴆は何も言わず、息すら殺して、一本残らず丁寧に剃っていく。 永遠に続くと思われた羞恥の時間は、鴆が湯を絞った手拭いで泡を拭い、 何度も検分するように剃った痕を指の腹でなぞった後で、ようやく終了した。 「よし、じゃあ風呂に入るか」 「…え?」 鴆の沈黙にのまれるように声をこらえていたせいか、やっと発したリクオの声は掠れていた。 何で今?とぼんやりしているリクオの身体を鴆が起こし、手際よく襦袢を羽織らせた。 「細かい毛までは拭えきれねえし。久しぶりに一緒に入ろうぜ」 肩を貸されて立たされて、な?と明るい緑の目を向けられたら、リクオに断ることなどできなかった。
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