あわよくばもう少し
3 廊下に出ると、部屋とは打って変わってひんやりとした空気が、雨の匂いと共に身体を包んだ。 剃られた股間に、やけに風が当たる感じがする。 おざなりに纏った襦袢に無防備なそこが擦れる感触を意識しながら、 リクオは鴆と連れ立って、雨戸を閉めた暗い廊下を進んだ。
誰もいない風呂場で、石鹸を泡立てた手拭いで丁寧に身体を洗われた。 いや、手拭いを使っていたのは最初だけで、身体に泡をつけた後、 不埒な手のひらと指は、リクオの弱い部分を念入りに愛撫した。 後ろから抱き込むようにして、背中や乳首、脇腹やへそをいじっていた手が、とうとう股間へと下りてくる。 「あっ…」 剃った跡を撫でられてぞくりとした。むき出しになった肌はやけに敏感だった。 柔肌の感触を味わうように撫でまわしていた鴆は、背後から首筋に口づけながら、なあ、と低い声で囁いた。 「剃っている最中、感じてたろ?」 「っ…」 びくりと身体を震わせたのは、その言葉のせいか愛撫のせいか。 「ずっとここを勃てて濡らしてたもんな?剃られて気持ちよかった…?」 「や…めっ…」 風呂用の椅子がガタガタなる。だが鴆は解放してくれず、滑らかになった股間と乳首を執拗に撫でまわす。 「すげーな…撫でただけでこんななら、舐めたら一体どうなっちまうんだろうなあ…?」 腹に着くほどに反応し、先端からはしたなく滴をこぼしているリクオの分身をゆっくりと扱きながら、鴆はそそのかす。 「なあ、舐めて欲しい?」 耳元から注ぎ込まれる男の声に、リクオは固く目をつぶった。 そんな恥ずかしいことは言えない。だけど未知の快楽への期待もあって、首を振ることもできない。 すると鴆は突然手を離した。 背中から湯をかけられ、身体から泡が流されていく。 「ぜ…」 驚いて鴆を見上げると、男は空になった風呂桶を手に笑った。 「あんたにその気がないなら、今夜はもう何もしないぜ」 意地悪な男の言葉に、視界が涙でぼやけた。 鴆のそこだって、雄々しく天を向いている。 ここまでいじりまわして煽っておいて、放り出すなんてひどすぎる。 恨みがましい気持ちで睨みつけると、鴆が促すように言葉を重ねる。 「さあ、どうしてほしい…?」 火照った顔を伏せ、リクオは男の骨ばった手を取った。 そして敏感になっているそこに導くと、小さい声だがはっきりと、ここを舐めてくれ、と口にしたのだった。
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