ご褒美だよ
3 マタタビ酒の蜂蜜湯割りを作ってやる度に、酒の割合を増して、くせのある味を蜂蜜で和らげた。 リクオは疑うそぶりもなく杯を受け取り、ぽつぽつと他愛もない話に興じている。 しまいにはほとんどマタタビ酒そのままになったが、気にならないようだ。 そろそろ頃合いとみて、リクオの肩を抱き寄せると、リクオは素直に鴆にもたれかかり、至近距離から鴆を見上げた。 金色の瞳は蜂蜜のようにとろりと潤み、白い頬はうっすらと上気している。 いつになく酔いが回った様子の主に、鴆はごくりと喉を鳴らした。 これならいけるかもしれない。 よこしまな期待に心を躍らせながら、優美な手から空になったグラスを取り上げた。 「なあリクオ」 鴆は用意していた猫耳の髪飾りを後ろ手に掴むと、その小さな頭に装着した。 黒の混じった銀色の髪に、白いふわふわの毛。「耳」の中は桜色の天鵞絨(ビロード)で作られている。 作り物の「天敵」の耳は、冷たく見えるほど整った顔に、意外なほどよく似合った。 「…可愛いな、あんた」 熱くなった頬を撫でながらそう言うと、おそらく何を装着されたかわかっていないリクオは、 困ったような嬉しいような表情で鴆を見上げた。 しらふの時に言おうものなら機嫌を損ねかねないが、今は酔いで判断力が麻痺しているらしい。 鴆はほくそ笑み、可愛くなった恋人の唇を何度も吸いながら、 胡坐をかいているために割れた裾の中に手を潜り込ませ、 吸い付くような内腿の感触を愉しんだ。
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