いつだって僕は
2 水もしたたるいい男…というにはあまりに濡れそぼった奴良組三代目を慌てて中に入れた後、 持ってこさせた大判の手拭いを冷え切った身体にかけてやり、そのまま風呂場へ直行した。 身体にはりついた着物を脱がせ、ざっと身体に湯をかけてから風呂に浸からせる。 夏とはいえ、嵐のせいでずいぶん風は冷たかったから、湯につかってリクオは人心地がついたようだった。 「なにもこんな嵐の日に来ることねえだろが」 襦袢一枚の姿で湯船の傍に座り込んだ鴆がたしなめると、リクオは湯の中で憮然と言い返した。 「ひどくなる前に来るつもりだったんだよ」 嵐が最も近くを通過するのは夜半過ぎというから、今のうちならまだ大丈夫だと思ったら、 予想外に雨風が強かった。 乗ってきた蛇ニョロは、リクオが薬鴆堂で背から降りた途端にどこかへ飛ばされていったという。 「昼は家にいるつもりだったんだんだけどよ…」 夜の姿に変化したら、やっぱり会いたくなってここに来たということらしい。 水気を吸って下りたままの髪と、ほんのり頬を上気させて、らしくなく口ごもる姿がたまらなく愛おしい。 鴆は上体を傾けて、鮮やかな色を取り戻した唇に口づけた。 「朝まで離さねえぜ?覚悟しな」 そう言うと、上気した頬がさらに染まった。
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