もう我慢できない・・・
2 リクオは清潔な襦袢越しに自分より少し高めのぬくもりを感じながら、 幸せな夢を見ていたはずだった。 夜ごとの逢瀬でのまどろみ。触れられるたびに敏感になっていく己の身体が少し怖い。 今日の絶頂も、後ろを肉棒で擦りたてられる快感だけで達してしまったようなものだ。 しかも上りつめると同時に気を失ってしまった。 鴆が与える快感に、身も心も溺れてしまっている。 今がとても満たされているだけに、いつかそれを失うのが怖い。 リクオはもっとぬくもりを得ようと手を伸ばそうとしたが、なぜか思うように動かせなかった。 それどころか、動かせない両手を共に上に上げさせられる。 不自由な姿勢に眉をひそめていると、シュッと腰帯を緩める音がして、 胸元をはだけさせる気配がした。 何やってんだ、と不機嫌になる間もなく、 「ッ!!」 胸に感じた鋭い痛みに、リクオはぎょっと目を見開いた。
「な…ぜ…鴆…?」 虫にでも刺されたかと、反射的に胸のあたりを払おうとしたら、 乳首に噛みついていたのは鴆だった。 甘噛みなどというレベルではなかった。何しやがる、と文句を言おうとしたリクオは、 胸元から己を見上げる恋人の、昏く燃える緑の双眸を見てぎょっとした。 「オレの腕の中で他の女の名を呼ぶたぁ、いい度胸じゃねえか、リクオよぉ」 「はあ?って痛ッ…!」 噛まれた乳首をざらりとした舌で舐めあげられて、リクオは苦痛に眉を寄せ、身を捩った。 だが鴆にのしかかられている上に、 両手首を腰紐で縛りあげ、紐の端を柱にくくりつけられているために、 思うように抵抗ができない。 「あんたをオレのもんだけにできねぇのは百も承知さ。 けど頭でわかっちゃいても、どうにも我慢できねぇ。 二度と俺の前で他の女の名前なんか呼ぶんじゃねえよ」 「他の女って…?あっ」 訳が分からぬまま、無防備な体勢で分身を強く握られ、リクオは呻いた。 どうやら寝ている間に、鴆を怒らせてしまったらしい。 怒った彼に、手ひどく抱かれてしまうのだろうか。 以前乱暴に抱かれた時のことを思い出して、リクオの心は少し怯んだ。 しかしきつく握られ、乱暴に扱かれている分身は、心とは裏腹に熱く脈打ちはじめる。 ――違う、これじゃあ期待してるみたいじゃねえか。 リクオは強く首を振った。 そんな彼の期待に応えるように、鴆はリクオを扱きながらきめ細かい肌に噛みつき、 強く吸い上げて痕を残した。 握りしめている分身の先端にも歯を立て、音を立てて強く吸い上げると、 リクオは痛みと快感に内腿を震わせて、あっけなく達してしまった。 鴆は放たれた欲望を最後の一滴まで飲み干し、丁寧に舐めとると、 文机の上に置かれていた木箱から、竹串のような細いガラス棒を取り出した。 「…あんたに新しい遊びを教えてやるよ」 鴆が冷ややかな声でそう言った次の瞬間、先端に鋭い痛みを感じて、リクオは声にならない叫び声を上げた。
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