一番奥まで

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角度を変えては続けられる深い口づけ、一枚づつ剥がれていく衣擦れの音。

夜ごと繰り返しているはずの行為なのに、今夜はなぜこんなにドキドキするのだろう。

舌に残る甘いチョコの味のせいか、それとも、思いのほか力強い、鴆の手の感触のせいか。

身体を押さえつけるようにのしかかる男の重みに、身体の熱がまた上がった。

「今夜はずいぶん可愛いじゃねえか。そんなにオレが欲しかったか?」

首筋に舌を這わせる鴆の声が耳朶をなぶり、身体の芯を疼かせる。

もう欲しくてどうしようもないのに、はだけた胸を這う手のひらは、あいまいに乳輪のあたりを撫でるだけで、

最も感じる部分には触れてくれない。

「っ…てめぇ…意地悪ぃ…」

自分から乳首をいじってくれとも言えず、涙目でひどい男を睨むと、

鴆もまた、興奮を隠しきれない目でリクオを見つめていた。

「悪い。オレも今夜は抑えがきかなくてよ…」

透き通るような頬は紅潮し、低い声は欲望に掠れている。

「どうやら、あんたに酔ったみてぇだ」

真顔でそう言った鴆を、リクオは涙を溜めた目を見開いてしばし見つめ、

ぷっ

あまりにクサい台詞に、つい吹き出してしまった。

「くそっ…よくも笑ったな」

たぶん酔いや興奮のせいではなく、顔を赤らめた鴆に押さえつけられる。

それでも身を捩って笑い続けていると、両脚を開かれ、鴆にあらぬ場所を咥えられてしまった。

「やっ…あっ…ダメだっ…」

股間に埋められた顔を引きはがそうとするが、笑った罰だと言わんばかりに、奥まで熱い口腔に包まれる。

「あっ…やだっ…ぁんっ…」

舌と口腔の動きは容赦なくリクオを追い上げ、甘くとろりとした空気が再び二人を包み込んだ。

前を咥えられながら、後口も指で慣らされた。

前後どちらからもぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえるまで愛撫される。

ふいに、どちらの愛撫も中断され、リクオは思わず鴆にすがる目を向けてしまった。

その鴆はリクオの羽織から、きれいに包装された小箱を取り出していた。

ここに来る途中に化猫屋でもらった、たぶん中身はチョコだ。

鴆は包みを勝手に開けると、中に入っていた一口サイズのチョコのひとつを口に放り込んだ。

リクオが何かを言う間もなく、鴆は再びリクオの脚の間に潜り込んで、チョコを咥えたまま、後口を舌で愛撫する。

「あっ…や…めっ…」

鴆は平気でそこに口をつけるが、リクオには抵抗があった。

身を捩って逃れようとするが、この細腕のどこにと思うような力で抑え込まれる。

なすすべもなく、暖かく湿った舌でそこを探られていたリクオは、ふいに異物を舌で押し込まれたのを感じて、息を飲んだ。