夢に見るは貴方




「待て、一応診せて…」

怪我はないと言っていても、リクオはもともと、自分の怪我をきちんと申告しない。

場合によっては、かすり傷が命取りになることもある。

医者としての義務を果たさせろと言い募る鴆の唇に、リクオの人差し指が触れた。

「気になんなら全部脱がせて、じっくり見りゃいいだろ。

けどその前に、布団に行こうぜ」

言うことをきかない主に戸惑いを覚えながらも、鴆は従うしかなかった。


一見どこがいいのかよくわからない、かぎ裂きだらけの現代服は、

後ろから見ると脚や尻のラインがくっきりと見えて、

だぼっとしたTシャツは歩く度に翻って、白い脇腹や腰のラインがちらちらと見える。

腰骨に引っかかっているだけのズボンは、Tシャツがめくれる度に見え隠れする形のよい尻やその狭間に、

手を差し入れれば容易に指が届いてしまいそうだ。

鴆の手を取り、鴆にあてがわれた客間にぐいぐいと引っ張って行ったリクオは、

目的地にたどり着くと、用意された布団の上に鴆を押し倒した。

「んっ…」

さらりとした長い髪が、顔にかかったと感じる間もなく、熱い舌が、ためらいもなく鴆の唇を割って入ってくる。

リクオからこれほど大胆に求められることはめったにない。

驚いたが、もちろん悪い気はしなくて、鴆も求めに応じようとリクオの衣服に手をかけたのだが。

脱がせられない。

上のシャツや首に巻いていた鎖はともかく、腰に巻いている硬い革製の帯やら、

脚や腰にぴったりとはりついた厚手の布は、脱がさせる気がまったくないようで腹が立つ。

いらいらしながら「帯」と格闘していると、リクオがくすりと笑った。

「オレがやるよ」

カチャカチャと硬質な音を立てて、あっというまに帯を解き、邪魔な布を取り去った。

生まれたままの姿になって、鴆に覆いかぶさる。

「あんた、下帯は」

ズボンの下に何も身に着けてなかったことに驚いて尋ねると、リクオはそれを鼻で笑った。

「んなもん、いらねーだろ。おめーんとこ行くのに」

さっき、この格好で出かけると言っていなかったか?

それに、他の男から貰った服なんか着て自分の前に現れるなど。

いらつく鴆をよそに、リクオは馬乗りになったまま鴆の帯を解き、胸元をはだけさせて、乳首に吸い付いた。

「っ…」

声をこらえる鴆の様子に満足して、リクオはいつも自分が鴆にされている手順で、

鴆の身体に手を伸ばし、唇を這わせた。

胸にある毒の模様を辿り、リクオと比べてずいぶんと脆弱な身体を、確かめるように掌を這わせた。

「くっ…」

脚を広げられ、分身をためらいなく口に咥えこまれて鴆はびくりと身体を揺らす。

いつもと立場が逆で、妙に落ち着かない心地だったが、

鴆の性器を唇と舌で扱いているリクオが、己の性器を弄っているのを見て、少し己を取り戻した。

「リクオ、オレもしてやるから足こっちに向けな」

提案して、互いに互いのものを咥えあう。

普段のリクオでは恥ずかしがってなかなかできない体勢だ。

鴆のものを咥えているうちにすっかり興奮した若い雄を舌と口腔全体で愛撫しながら、

形のよい尻を揉みしだき、薬液をつけた指でひくつく入り口を撫でまわした。

「んっ…」

後ろを刺激すると、途端にリクオの舌づかいが鈍った。

薬液を塗り込めるように円を描き、つぷりと指先を潜り込ませると、くぐもった声が脚の間から聞こえた。

熱い肉の狭間に指を入れる。狭い肉壁は指を包み込み、締め付け、奥に誘うように柔らかくうごめく。

中の動きに合せるように指を動かすと、リクオはくぐもった声を上げながら、

自ら咥えこむように腰を動かした。

「ぁっ…もう…ぜんっ」

たまらず分身から口を離し、もう欲しいとリクオがねだる。

扱いづらい、と思ったのは最初だけで。

こうなってしまえば、いつものかわいい恋人だった。



   



裏越前屋