下帯物語

13.牛鬼と鴆




奴良組本家には、牛鬼や鴆の他にも、続々と幹部たちが集まりつつあった。

牛鬼は鴆を客間に呼び、リクオが最も信頼しているお前だから話すのだが、と前置きして、一部始終を話し、問題の下帯を見せた。

四国からの挑戦状にリクオの下帯が使われたと知って鴆は驚き、そしてギリリと奥歯を噛みしめた。

「よりによってリクオの下帯を盗み出すたぁ、とんでもねえヤローだ。

ひっ捕まえて鴆毒を飲ませてやりてえ…!」

憤る鴆に、牛鬼は重々しい表情で頷いた。

「雪女は特に盗まれた洗濯物はないと言っている。

となれば、何者かがリクオの部屋に忍び込んで盗んだ可能性が大きい」

「ああ。リクオの下帯ならうちにもあるが、盗まれた形跡はねえからな。

となるとやはり本家の誰かが…」

鴆が考え込みながら口にした言葉を、牛鬼が聞き咎めた。

「待て。リクオの下帯が、なぜ薬鴆堂にある」

牛鬼の問に鴆は肩を揺らしたが、あくまで平静を装った。

「なぜってそりゃあ、うちによく泊まるし、替えがなきゃ不便だろ?

夢中になってどっかにいっちまうこともあるし」

そこまで答えて、鴆はふいに口をつぐんだ。

棒をのみこんだような顔で、目の前の下帯を凝視する。

「…これってまさか、あの時の」

喘ぐように呟かれた言葉を、牛鬼はもちろん聞き逃さなかった。

「あの時?」

その時、閉めていた障子がスパンと開き、夜の姿のリクオが現れた。

「ここにいたのかよ。一体何だっていうんだ?今日の総会は…って、牛鬼…?」

物騒な気配に満ち満ちた畏が、鴆と、それからリクオまでもを後じさらせた。

二人の目の前で、すさまじい形相をした牛鬼がゴゴゴ・・・と仁王立ちになっている。

「どういうことなのか説明してもらおうか。鴆、それから三代目」





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次でラストです。長かった…。

裏越前屋