下帯物語

4.なまはげ×2




夜半を大分過ぎた頃。

「痛だだだ…」

山中の川のそばで、愛用の包丁を研いでいた赤なまはげは、皮一枚を切ってしまった赤い手のひらを押さえて痛がった。

「おめど、何どごやってるだ?ドジ」

傍でくつろいでいた青なまはげが声をかける。赤なまはげは全身が赤いからよくわからないが、血はほとんど出ていないようだ。

「ほんたら怪我でいちいち騒ぐな」

「んだども、ばい菌が入ったら大変じぁねか」

怖い顔の割には意外と心配性である。
赤なまはげは手を押さえたまま、何か使えるものはないかとあたりを見回した。
すると、星が輝く夜空から、まるで天が赤なまはげの望みを聞き届けたかのように、白く長い布が振ってきた。

「ちょうどええ。これどご巻いて、ばい菌どご防ごう」

「好きにしな。もういぐぞ」

下帯を手に巻き付け、満足げな赤なまはげに、青なまはげが声をかける。

二匹の妖怪はようやく腰を上げ、故郷の遠野へと帰っていった。





 


なまはげズの会話は秋田弁コンバータで適当に・・・。
かえってばい菌が繁殖するとおもいます;;

裏越前屋