下帯物語

7.魔魅流と竜二




京都、花開院本家。

部屋で竜二が本家の蔵書を読んでいると、魔魅流が白い布を手に音もなく入って来た。

「神社の木の枝に、結んであった」

おみくじと一緒に。と、竜二に布を手渡した。

一見、柔らかい腰帯のように見えるそれは、墨で何かが書かれているものの、明らかに男の下帯である。

「複数の妖怪の痕跡がある」

竜二は下帯を検分し、帯の端に、赤い糸で丁寧に刺しゅうされた名前を見て、ニヤリと笑った。

「ちょうどいい。この本に書かれている呪法を試してやろう」

そういうと、本を置いて立ちあがり、手近なハンガーに下帯を引っかけ、壁に掛けた。

「呪殺の基本は、本人ではなく本人の持ち物――特に髪の毛や、体液がしみ込んだものに呪をかける。

これだけ妖怪の気配がする布だ。

オレの言言にお前の雷を加えれば、一度にたくさんの妖怪にダメージを与えられるぞ、魔魅流」

「…」

魔魅流はガラス玉のような目で無機質に竜二を見た。

あの奴良組三代目を殺るのかという無言の問に、竜二はフンと口元を歪めた。

「なあに、命まではとらないさ。

ただ、このふんどしの持ち主のナニは、使い物にならなくなるかもしれんがな。

妖怪の子孫なんぞ、増えないに越したことはないだろう?

いくぞ、魔魅流」

ところが、竜二が言言を走らせ、魔魅流が手のひらから雷を迸らせた瞬間。

なぜか部屋の入口から吹き込んだ突風が下帯をさらい、部屋の外へと運んでいった。





 


強引な展開ですみません;;
たぶん同じころ、リクオ様の背筋がゾクッとなっていますね…
むにゃむにゃがヒュッと縮んだかも(^_^;)

裏越前屋