届いてほしい
6 あたりをはばかることなくリクオを愛したかったから、薬鴆堂に連れて帰った。 居室にリクオを待たせておいて、すばやく着替えた。 「鴆、それ」 リクオが目を見開く。 「あんたがこの前くれたやつだ。似合うか?」 リクオが出て行った後、部屋の隅にぽつんと置かれた包みを開けたら、涼しげな藍色の甚平が入っていた。 長着に比べて手足の露出が多くて、確かに夏の暑い日には過ごしやすくていい。 リクオは甚平姿の鴆をまじまじと見ると、なぜか顔を赤くして目を逸らした。 「え、似合わねえ?」 「…似合ってる」 目の前に座って覗き込む鴆の視線を避けながら、リクオはぼそぼそと言った。 何だか腑に落ちない反応だが、抱き寄せてありがとな、と囁くと、白い耳が朱に染まった。 その耳朶を食み、舌でねぶってから、形のよい薄い唇に吸い付く。 もう涙の味はしなかった。 「んっ…」 リクオがとろけるまで口腔を舌で愛撫し、力が抜けた身体を抱き寄せて、首筋に顔を埋める。 「隣の部屋、行くか?」
襦袢一枚にして、褥に横たえてから腰紐を解いた。 行燈をひとつ灯した薄暗い部屋で、やけに大きく聞こえる衣擦れの音と、 ぼんやりと鴆を見上げる金色の目が、初めて抱いた時のような緊張感を鴆に与えた。 いや、衝動に突き動かされていた初めての時より緊張しているかもしれない。 今夜ばかりは丁重に扱わないと、もう次はないだろうから。 そう思って慎重に触れていたら、リクオがもどかしげに身動きした。 「もっと…いつもみたいにしろよ」 思わぬ要求に、鴆は困惑した。 「けどよ」 「相手がお前なら、乱暴にされたっていい。 …この前のこと、忘れたいって言ってんだろ」 その言葉に、鴆の理性の糸は簡単に焼き切れた。 |
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