Outfox

 



暴れる身体をたくみに押さえ込んだ。
抵抗する気力を奪うべく、何度も角度を変えて唇を吸い、深く舌を差し入れる。
滑らかな舌を捕えて絡めとり、自分の口腔に引っ張りこんだ。

「…ん…っ」

 巧みな舌と唇にさんざん嬲られて、高耶はおもわずくぐもった声を漏らした。
外の喧騒がかすかに聞えるまでに静かになった室内を、荒い吐息と濡れた音、
そして時折漏れるあえかな声だけが満たした。

 細い腰を引き寄せ、直江の腰と密着させた。薄い服地ごしにつたわる互いの欲望が
生々しく擦り合わさって、高耶の身体から力が抜けた。
くずおれかけた高耶の腰をしっかりと支えて、ベッドへ導いた。

 久々に触れる肌は熱かった。剥ぎ取るように長衣を脱がせて手を這わせる。
空調がきいているにもかかわらず、早くもしっとりと汗ばんだ胸がまさぐる掌の感触に
敏感に反応する。飢えた唇は耳の裏を吸い上げ、うなじを舌で辿り、顎の裏を痛いほど
吸って跡を残した。滑らかなオークルが肌にみるみるうちに朱いあざでいっぱいになる。

 貪り食われるような勢いで中心を口に含まれた。愛撫というよりは舌でしごきたてる強引さで
射精を強要する。
このまま出さなければ根元から食いちぎられかねないという戦慄と、獣のように求められる快感に
震えながら、高耶は直江の口腔に精を放った。

「最初にあなたの中でイかせて。それからあなたの大好きなコトをたっぷりしてあげるから」

 身体を返し、獣の体勢にさせた高耶の後孔を長い指で忙しなくまさぐりながら、
直江は荒く掠れた声で高耶に囁きかけた。
 気持ち解しただけのソコに固く怒張しきった切っ先があてがわれる。

「ア…アァッ…!」

 狭い内部に強引に押し入ってくる熱棒に高耶はシーツを握り締めた。
男に後ろを犯されることに快感を覚えている自分を恥じる間もなく、息もつかせぬ勢いで揺すぶられた。

「ハッ…アッ…アッ…ァアンッ…」

 抽挿を繰り返す間にも中の楔は熱さと質量を増していく。
奥の奥まで突かれながら、高耶は自分の身体がどれだけ飢えていたかを知った。
独りで熱を持て余す夜、下肢に手を伸ばしながら誰のことを考えていたか。
女とのセックスでも満たされない何かがそこにあった。熱い肉棒に擦り立てられ、突き上げられる度に
高耶自身の先端からは先走りの滴がしたたりおちる。たまらず手を伸ばした。

「ァン…ァアン…アン…」

 後ろをかきまわされる動きに合わせて自慰をはじめる。淫らに揺れる腰をぐっと掴み、
直江はさらに抽挿を激しくした。高耶の嬌声がさらに高くなる。

「ア…――ッ!」

 最奥を突かれ、内壁がきゅうっと収縮した瞬間、熱い精が内部に放たれる。
それを感じた高耶も唇を震わせて自分の手の内に開放した。


 

 

 

 呼吸が戻ってくるまでの間、高耶は完全に無防備だった。

「何を――!」

 男が何をしているのか気づいたときには既に両手首を纏め上げられていた。

「直江ッ」

 睨み付ける高耶に対して直江は「暴れると危険ですから」と意味不明の言葉をかけて、
麻縄をベッドヘッドに括りつけた。上から覆い被さられた状態のために、思うように抵抗できない
高耶をいいことに、両足を開いて立てられる状態でベッドの足に縄の先を固定した。

 抗議する高耶の唇を塞ぎ、ふいにベッドを離れる。
冷蔵庫を開ける音。カチャカチャと何かを放り込み、再びもどってきた。
 サイドテーブルに置かれたのは氷がいっぱい詰まったアイスペールだった。

 直江は氷のひとかけらを口に含むと再度くちづけてきた。
冷たい氷の欠片が二人の口の間を往復する。
やがて口内の熱で角が取れてくると、直江の舌がそれを引き取った。

 一体何の真似だ、と問い質す間もなかった。
今だ熱をもっているその部分に濡れた冷たいものを入れられて、高耶は悲鳴をあげそうになった。

「嫌だッ…痛」
「嘘ばっかり。角をとったから痛くはないでしょう?」

 平然とそういってのけながら2個目、3個目を同様に高耶の口に入れてから秘部へ送りこむ。
確かに傷は突いていないだろうが、ごろごろと居心地のわるい異物感を感じさせるそれが
冷たさを通りこして痛みを与えているのは本当だった。

頭は拒否しているにもかかわらず、氷を入れられているソコは、いつもとまったく違う刺激に
むしろ悦ぶように異物を締めつけていた。
内部の熱はあっという間に氷を溶かし、先刻直江が中で放ったものと混ざった液体となって
秘所から流れ出す。
そこがいやらしく蠕動して新たな氷を咀嚼し、精液と一緒に流れ出す様を、直江はつぶさに観察していた。

 

 

 

 もういくつ入れられたかわからない。
入り口の感覚が完全に麻痺した頃、直江はサイドテーブルから別の物を取り上げた。
 カチリという音に高耶が目を上げると、直江はライターで何か針のようなものをあぶっていた。

「…何を、している」

 嫌な予感に、高耶の声が掠れた。だが直江は平然とした表情で、手の中のそれを見せた。
 純金らしい、短い針の先に真紅の宝石がついていた。

「…ピアス?」
「ええ。お誕生日プレゼントです」

 直江はなぜか嬉しそうに高耶の唇を啄ばみ、両足の間に頭を埋めた。

「おい――」
「少しの間我慢して。動くと怪我をしますよ」

 高耶が男の意図を悟ったときには時すでに遅く――
 思いもよらない場所を貫いた激痛に、高耶は叫びながら気を失った。

 




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次も裏です。思ったより長かった・・・(爆)