Outfox

 

5



 ウバールでは妻となる女性に純金の装飾品を贈る習慣があった。つまり、結婚指輪と同じ意味だ。
直江は考えた。男として、高耶に彼が直江のものであるという『しるし』を身につけさせなければならない。
だが指輪も腕輪はおろか、目につくところにする装飾品は高耶は身につけようとはしないだろう。
 ならば外す必要がなく、自分にしか見えないところにつけさせればよい。

「冗談じゃない!今すぐ外せッ」

 だが承諾もなく、あらぬところに穴を開けられてしまった高耶は当然激怒した。

「外さないなら自分で取ってやる!」
「外せばまたつけるまでです。痛い思いをするのはあなたですよ」

 俺と会った時につけてなかったら――どうなるかはわかってますね。

 ぞっとするような瞳で見据えられ、高耶は言葉を失った。この男はよっぽどこの身体の所有権を主張したいらしい。
 つける場所を考慮してか、石は円くて小さなものだったし、穴を開けたあとにきちんと消毒されてはいたが、
やはりその部分に「つけられている」感触がある。
「そのうち気にならなくなりますよ」と直江は言うがそういう問題ではない。

 だが直江は至極満足そうにその石を舐めあげると、感覚を取り戻した後庭へ舌を差し入れた。

「直江ッ…ごまかすなっ…」

 流されまいと眉を切なげに寄せながら高耶がなじる。舌の動きにあわせて蠕動する内部を擦りあげながら、直江は答える。

「ごまかしてなんかいない――この身体は、俺のものでしょう?」

 頑なに首を振る高耶に、熟れた秘所に歯を立てた。舌が離れて、太く長い指が侵入する。

「アン…ッ」

「俺にいじられてこんなに悦んでいるくせに。本当は嬉しいんでしょう?あなたは恥かしいコトが大好きですからね」

 言葉で辱められ、言いしれない屈辱を感じるにもかかわらず、高耶の中心ははりつめて涙を零している。
 直江が入ってくるとき、それの周りの皮膚が受け入れるために引っ張られ、ぴりっとした痛みが走った。
怯えたように収縮する壁を押し広げるようにして全てを収める。

 正常位で腰を使いながら高耶の指を取り、ピアスをつけた場所に導く。
固い石の感触は、まさに入口付近にあった。そのすぐ横では忙しなく出入りする直江のペニスを口いっぱいに
頬張っては伸縮を繰り返している。その動きに合わせて石もリズミカルに動き、触れる高耶の指を擦っている。
直江は高耶の指を今度は二人が繋がっている場所に触れさせた。

「ア…ァア…ッ」

 一番恥かしい場所を男の一物で荒々しく蹂躙されている――そのあまりに生々しい感触に、高耶の体温がさらに上がる。
 痛いほどに勃ち上がっている乳首を吸った。左右交互に、口の中でころがすように愛撫を与えるが、
二人の腹の間で擦られ反り返っている高耶自身には全く触れようとしない。
自分で慰めようと伸ばした手は、直江に阻まれた。
 何故、と潤んだ瞳で直江に問うと、直江は熱を込めた目で高耶を見つめた。

「去年の今日、私が知らないあなたはまだ男を知らなかった…だから今日は俺を受け入れたまま、後ろだけでイッってください」

 両足を腰に絡めさせ、両手を首に回させて、腰をグッと掴んだ。
 痺れるような快感が背筋を這い上がっていく。乱暴に攻められれば攻められるほど高耶の身体は悦んだ。
これだけ激しく貪られるなら、もうこのままどうなってもいい――快楽に霞む頭で高耶はそんなことさえ思った。

「高耶さん――あなたは俺だけの…!」
「ァ…アアア――ッ」

 

 

 

 


「…いい気になってんじゃねぇぞ」

 シーツに突っ伏したまま、高耶が釘を差した。
 日はすでにとっぷりと暮れている。あれからさんざん羞恥プレイを愉しんだくせに、とはさすがの直江も
口には出さなかった。高耶は必ず手に届くところに武器を隠している。無用に怒らせて寿命を縮めるのも馬鹿らしい。

「オレは誰のものにもならない。こんなものでオレは縛られない。おまえを殺したらこんなものすぐに外してやる」

 言いながら、これでは負け惜しみにしか聞えないと思ったのか、高耶は目を伏せて悔しそうに唇を噛んだ。
 だが直江は嘲笑ったりはしなかった。むしろ心底嬉しそうに微笑む。

「つまり私を殺すまではつけてくれると」
「!オレはッ」

 思わぬ言質をとられて高耶は身体を返す。だが直江は言葉の訂正を許さなかった。

「上等です。殺してごらんなさい――できるものならね」

 でもそれまであなたは私のものですよ。
 きつく睨みすえる視線の先、直江は挑発するように高耶を見下ろした。




裏小説部屋へ 


この本が出たとき、ピアスの場所についてよくきかれました・・・(笑)。
入り口の横に待ち針みたいのがちょこんとつけられていると思ってください;