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ジジ ・ ・ ・と燭台の蝋燭の芯が燃えた。
闇の中で、オレンジ色の炎が紗の帳の中を淡く照らし出している。薄布の向こうでは一組の人間が蠢いていた。
片方は白の長衣を着たまま、獣の体勢に伏せた全裸の青年の上にのしかかっている。服を着た男が動くたびに
青年は苦しげな声をあげた。
彼はただ全裸というだけではない。麻縄で亀甲に縛られていた。後ろ手に縛られ、首から股にかけて縄が巡らされている。
紗の外から照らされる光に、太い縄目の間から小麦色の肌が浮かび上がっていた。きめ細かい、しっとりとした肌には
玉の汗が浮かび、動くたびに弾けるようにこぼれ落ちる。艶のある漆黒の髪は汗に濡れ、上気した額やうなじに
張り付いていた。
男の動きに押し出されるようにうめき声を上げながら、彼は息も絶え絶えに懇願する。
もう、やめてくれと。
だが男はますます卑猥に腰を使いながら耳元で意地悪く囁くのだ。
「やめてもいいの?ココをこんなにしているくせに ・ ・ ・俺のをイれられて気持ちイイんでしょう?」
高耶は必死に首を振る。固く閉ざした瞼からとめどなく涙があふれた。
それを快楽と呼ぶなら、地獄の快楽だった。後ろを貫かれ、ソコを擦りたてられる快感に身を灼くような羞恥と
屈辱を感じながら、どんなに追い上げられても欲望を吐き出すことができない。突き入れられる度に先端から
先走りを滴らせ、今にも暴発しそうな高耶自身の根元は、麻縄でしっかりと堰き止められていた。
「本当は、違うお願いをしたいんじゃないですか?」
悪魔のような声が耳朶を噛みながら唆す。
「俺の言うとおりにお願いしてごらんなさい。案外、聞いてあげるかもしれませんよ」
『どうぞいかせてください』と。
高耶は唇をかみ締めて首を振った。こんな男にそんなことを言うくらいならこのまま殺された方がマシだ。
どんなに攻めたてられても強情に首を振り続ける高耶に、直江の表情は一気に冷えた。
「――そう」
薄い色の瞳に冷酷な光を浮かべながら、直江は高耶から自身を引き抜いた。支えを失った高耶は前のめりに
ベッドに倒れこむ。
「聞き分けのない子供にはおしおきをしなければなりませんね」
ナイトテーブルの引き出しからあるものを取り出し、うつ伏せに倒れている高耶の腰を引き上げ、尻を突き出させた。
未だ下半身の疼きを持て余している高耶はされるがままだ。
するとひゅっと空を切る音がして、乾いた音が室内に響いた。
複数の革紐が皮膚に当たるたびにゴムを弾いた時のような音が連続して室内に響き渡る。
尻に鈍い痛みがはしった。続けざまにうたれているとその痛みは熱を伴う疼痛に変わり、未知の感覚となって
じわじわと身体の奥に伝わってくる。
「どうやらお尻だけでは物足りないようですね」
苦痛の声ひとつあげることもなく、かえって吐息を熱くしている高耶の身体を乱暴に返す。
高耶が持っていた短剣を拾い上げると、身体に巻いていた麻縄をブツリと切った。
だが両手首を拘束している縄はそのままだ。仰向けにして、かすかに縄のあとが残っている胸に向かって
鞭を振り下ろした。さすがに悲鳴を上げて身体が跳ねる。
直江が手にしているのはナインテールズと呼ばれる9本の革紐を束ねたものだ。
音は大きいが皮膚を傷つけることはなかった。
直江が鞭を振るうたび、滑らかな小麦色の肌には放射状の赤い華が咲いた。臀部よりは痛みは鋭いものの、
打たれたところから生まれるむず痒い疼きに、高耶の乳首はぴんと立ったままだ。摩擦で熱くなった革紐の束が
揺れるたびに高耶の身体も熱くなっていく。
痛みとともに生まれる、自虐的な快感を散らそうとしきりに身を捩り、ともすればもっととねだってしまいそうな唇を
きつく噛んだ。
お仕置きは太腿にも及んだ。足を大きく開かされ、内腿に9本の革紐の制裁を受ける。やわらかい皮膚に赤い痕が
くっきりと残された。
「アアンッ」
腿の裏側を狙って打ち下ろしていた時、革紐の一本が高耶の中心に当たった。その刺激で高耶は溜めていた
欲望を開放してしまった。高耶の腹部と、鞭の先に白濁した液が飛び散った。
「あきれたひとですね、鞭で打たれてイッてしまうなんて。そんないやらしい身体でよくも意地を張っていられる
ものだ」
ことさら高耶を辱めるように直江は嘲う。
「でもこれではおしおきになりませんね。しつけはちゃんとしないと ・ ・ ・ね」
次もSMシーンです;ここで嫌と思われた方は表にひきかえしてくださいませ;